デザインに使える!ゲシュタルトの7つの法則

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ゲシュタルトとは

 ゲシュタルトとはドイツ語でGestaltと書き「形態」を表します。
 このゲシュタルトは心理学では、人が見たこと、聞いたことなどを知覚したことを「まとめて大きな概念」として「総和以上の体制化された構造」にして認知するという意味の単語です。
 簡単にまとめると、「人は知覚を受けた際にできるだけ簡単に咀嚼して認知しようとする心理的作用」によって作られた概念をゲシュタルトと呼びます。
 そしてこのまとめられた大きな概念(ゲシュタルト)は知覚した概念を全て足した量よりも大きくなります。
 最近ゲシュタルトというとゲシュタルト崩壊やと言う単語を良く聞きます。ゲシュタルト崩壊とは全体を認識する能力が崩れることを表現する心理学用語です。モノゴトから全体観を失ってしまう現象をさしています。

ゲシュタルトのデザインへの応用

 デザインを行う場合は意識的もしくは無意識的に、このゲシュタルトの法則に基づいて、取りまとめたい概念をグループとして近くに集めたり、同じ形状、同じ色にしたりします。

またはその逆で、違うグループとして認知してもらいたい概念は、離したり、違う形や色にしたりします。

また目立たせたい要素を集団から引き離すことで、ゲシュタルト心理学を逆手にとり、強調したいものを際立たせたり、さまざまに活用しています。
 デザインとは「ユーザを想像して製品をかたち作る諸要素全ての最適解を決める行為」ですから、ゲシュタルトを理解することはユーザの認知を理解するために大切です。

 デザインの基本としてグラフィックデザインで言われる4つの原則「近接・整列・反復・コントラスト」もこのゲシュタルトを類型化したものです。
 デザインからユーザが製品から受け取る概念はたくさんあると思います。かっこいい、伝統的である・本物である・シンプル・ブランドロイヤルティなどです。これらデザインからユーザが受けた概念の塊が製品のゲシュタルトになります。
 このようにデザインを扱う上でゲシュタルトはとても大切な考え方です。

デザインへゲシュタルトを使った活用を評価する方法の実例はこちらにありますので参考にしてください。

ゲシュタルトの生い立ち

 心理学としてアルヴェルトハイマー、ケラー・コフカ、レヴィンらベルリン学派によって提唱された形態心理学です。
 これまで心とはを要素の寄せ集めた組み合わせという加算される関係で決まるという説が主流でしたが、心を要素の集合とみなす要素構成的な考え方を否定して要素同士の互いの相互作用によって様々な組み合わせ効果が発生し、あたかも乗算や除算、べき乗のような関係になり概念が巨大化されたり、逆に矮小化されたりする関係になることを表しています。

総和以上とは

 総和以上とは、概念が内包する種々の意味や方向性を含み、更に新たな意味を生み出す概念間の関係性の全ての意味の総和が、構成する概念の意味を単純に加算させた総和を超えることを指します。

体制化された構造とは

 「体制化された構造」とはどんな状態でしょうか。広辞苑で「構造」は「いくつかの材料を組み合わせてこしらえたもの、・・・」とあり、「体制」とは「社会が一定の原理によって組織だてられている状態」(大辞泉)とあります。ですからゲシュタルト(総和以上の体制化された構造)とは、「各々の概念を一定の原理(個人の情動、知識、価値観)に従って、概念の構成要素を分解、結合、乗算などを行い、関係性に応じて再配置し出来た認知」と言えます。

プレグナンツの法則とは

 ゲシュタルトを生み出す認知は、M.ヴェルトハイマーによって提出された一般的原理「プレグナンツの法則」とも呼ばれます。「プレグナンツ」とは「簡潔な」という意味の言葉です。ゲシュタルト心理学における人間の知覚の法則。事物や図形を知覚したり記憶したりする際に、そのときの条件の許すかぎり、簡潔化された規則的な形態ないし構造をもつ塊として把握される傾向があることを指します。そのため簡潔化の法則とも呼ばれています。

ゲシュタルトの例

 例えば絵を例にすると、点で描かれた絵を見て、単なる点の集合のはずが、俯瞰してみると「形態」を表すことや、動画の様に、複数の写真を連続して見ただけで、動いているように見える事は、ゲシュタルトの働きを表します。音楽を例にすると、音の集合体が集まるとメロディやリズムが生まれ楽曲になる。これがゲシュタルトです。
 このように聞くと当たり前のことばかりですが、似たようなグループを仲間化したり、似ていないものを切り捨てる。一つのモノの認知をそのまま周囲へ拡大する拡大解釈や、過小に評価したり、人はさまざまな瞬間に情報をまとめたり・分解・掛け合わせ・削るなどしてゲシュタルトを作ることで、様々なモノゴトを認知しています。
 以下にデザインへのゲシュタルトの使われ方を理解するために、形態におけるゲシュタルトの例をあげていきます。

ゲシュタルトの基本法則

 ゲシュタルトの法則とは、人は物事を認知する際に、要素の配置、形、色・・・など、似ている要素をグループ化したり、異質な要素を分離化したりして関係性を見出そうとする法則を指します。人間が何かを認知する際、私たちは構成する個々の要素を詳細に見る前に全体性を認識しようとします。ここでは、ゲシュタルトの法則の根幹をなす、基本7法則について認知する側から見ていきます。

1)近接の法則

 距離が近い要素同士が同じグループだと認知する法則です。それぞれの要素の数や形態やカラーが異なっていても、近接された要素同士は同じグループと認知します。

名刺を例にすると会社名とその所属は属性グループとして近接させます。名前とふりがな・肩書きなどを名前グループとして近接させます。そして郵便番号・住所・電話番号・メールアドレスなどの連絡先グループをひとまとめに近接させます。

そしてこれら各々のグループは近接させずに離れて配置することで分かり易い名刺になります。

2)類同の法則

 同じ色や同じ形、同じ向きのもの同士は同じグループだと認知する法則です。近接の要素同様、それぞれの要素数が異なっていてもグループと認知します。

オーディオアンプを例にすると操作パネル右側に配置された小さいランプと中サイズの3つのボタンはそれぞれが類同していて仲間であることを明確に示しています。

3)連続の法則

 図形はつながった形に認知しやすい法則です。

 例えば、2直線が交差している形状は、交点を境に「2つの『く』の字の形の集まり」とは認識されず、2本の直線が交差していると捉えるのは、連続の法則によるものです。

4)閉合の法則

 閉じた形をしているものは1つの同じグループだと認識されやすいという法則です。【 】や( )のような括弧が2つで1セットのように見えるのは、閉合の法則によるものです。

5)面積の法則

 重なっている2つの図形が存在する場合、面積の小さいほうが手前にあるように見える法則です。例として日の丸は白色の矩形が地となり赤い丸が地の上に存在すると感じるのも面積の法則によるものです

6)対称の法則(良い形の法則)

 左右対称な図形ほど認識されやすいという法則です。有名な「ルビンの壺」の図が紹介されますが、対称的な形態があると意図せずに壺の絵や人の顔として認識し、入れ替えても認識することができるようになります。このように左右対称にすると一つのグループとして認識しやすくなるのは対象の法則によるものです。

7)共通運動の法則(動作を含むため厳密には形態のゲシュタルトには含まない)

 同じ方向に動くものや同じ周期で点滅するものなどが同じグループだと認識されるという法則です。例えば、同じ周期で点滅するランプのグループと、別の周期で点滅するランプのグループがあれば、各々を同じ仲間として認識するのは共通運動の法則によるものです。

デザインへの活用

 デザインを行う場合は意識的もしくは無意識的に、このゲシュタルトの法則に基づいて、グループとして取りまとめたいコトは近くに集めたり同じ形状・色にしたり、ゲシュタルト心理学の逆手をとってまとまった集団から引き離すことで強調したいものを際立たせたりさまざまに活用しています。

 デザインとは「ユーザを想像して製品をかたち作る諸要素全ての最適解」を決める行為ですから、ゲシュタルトを理解することはユーザの認知の法則を理解することです。そのためデザインにとってゲシュタルトはとても大切な考え方です。

形態以外のゲシュタルトの例

 他に前述のとおり、音楽は個々の音が連続したり重なって聞こえることで、単に一音ずつの音として認知するのではなく、人の発話であれば会話として認知します。また一音ずつの楽器の音色がリズミカルに続けばそれは音楽として認知していきます。

 音楽の3要素はメロディ(旋律)リズム(律動)ハーモニ(和声)とされます。聴覚への刺激は、一つ一つの音の高低変化の連続体をメロディとして認識し、音の連続体が既知であればそのメロディが何の曲であるかを認知できます。その際にメロディのキー移調(変更)した場合、単音が既知の音階と異なっていても連続体としての変化の構成が同一であれば、同じメロディだと認知でき、これもゲシュタルトの1つです。

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