デザインを言葉にする上でデザインの思考手順について記します。
自由に自身のイメージを組み立て発信していくことをアートとすれば、新たな視点を提供することと作品が完成すればアートは成立しますが、デザインは製品を作り上げる行動を指していますから関係する他者(ステークホルダー)に理解してもらうことはとても大事です。
デザインを議論する目的は単に自身の好みを主張するためではありません。ここではプロジェクトとしてデザインをよりよいものに練上げるために議論することを前提としますので、主張する内容が議論する相手に理解されなければなりません。
そのためには主張する内容を他者に理解してもらうに、自身でデザインを理解する必要がありますから、デザインについて知識があった方が有利です。そのため本ログでもできるだけデザインについて説明していきます。
デザインの説明を考えるために、デザインをより理解することがあります。そのためデザインを作る指向手順を考えてみます。
デザインとは整理・洗練・整頓
デザインとは整理整頓に洗練を足して「整理洗練整頓」を行う行為です。
なにをデザインに盛り込むか情報やアイデアを取捨選択し整理してデザイン要素を決めていきます。
デザインに不必要な要素があってはいけません。全ては必要不可欠な要素だけで構成することです。
すべてのデザイン要素でなぜこの要素が存在するのか、その存在意義を問う行為が整理です。
そして個々の要素を要素単位で磨き上げ製品コンセプトに相応しい形態・カラー・質感にすることが洗練です。
洗練した要素をグラフィックならレイアウト、プロダクトなら造形、WEBデザインであればサービスなどの対象製品のインタラクティブな変化を決定し配置していく行為が整頓にあたります。
この整理・洗練・整頓を行ったり来たりするのがデザインです。これら手順を進めるためにもコミュニケーションのために言葉を使います。
これらの順番は整理・洗練・整頓と順に行っていきますが、要素の洗練を行っていたら不必要な要素を見つけて省くとか、逆に製品コンセプトを的確に表す要素を思いついて追加するといった手戻りや、要素の整頓中に要素同士の関係性を考えると不要になった要素が見つかり、省いていくまたは追加するとか、要素の相互関係から要素を洗練する方向や度合いを変更することがしょっちゅう起きます。
情報の整理としてのデザイン要素の取捨選択について
要素の整理はデザイン行為の中でも源流にあたる作業で大切な作業のひとつです。というのもデザインでは作り込む情報の過不足、情報が超過することはデザインを混濁させる原因の最たる原因であり、情報が不足することはデザインする以前の問題であり、デザインが果たすべき情報を作り手から使い手であるユーザーへの情報伝達が成立していないという問題です。
情報が不足すればユーザーへの訴求が足りないことになりますし、過多であれば冗長なしつこい表現ということになります。
表現は異なりますが俳句も非常に似た性格をしています。乗り物を描写すれば他の言葉との関連は必要ですが、既に乗車していることを示唆し「乗る」という言葉は不要とされたり、食べ物や飲み物の描写をすれば、「食べ」や「飲み」という表現は無駄に音を使ったとされる、究極とも言える取捨選択行為で、この世界は読み手の技量が高いことを前提にして情報を取捨選択しています。
似た行為で年賀状に句読点をつけてはいけないというのも、句読点は元々が漢文を読む際のレ点や一、二点のようなもので、どこで単語が切れているかがわからないリテラシーの低い読み手に向けたサポートという位置づけの読み手の補助具から発生した仕組みなので、年賀状の様に目上の方に年始の挨拶として差し出す文章に句読点は失礼になるということが伝わっています。
日本は「相手を察する」ことがどれだけできるかという文化が根付いていますから、情報の繰り返しや飲み解くことが出来るとされるリテラシーレベルが高く設定されていますが、どのようなところでも情報の提示は比較的一定のレベルが守られているように感じます。
対して多民族国家では情報レベルの格差が大きく、食料品や日用品を売っているところでは価格が安いことを猛烈にアピールし「EDLP(Every Day Low Price)」などの標語を生み出すコピーライトが大切になります。一転して高級品になるとコピーライトもBIで発信し特に言語化しないということも行われます。また価格も分からないように展示したり、すべての人に向けて声高に情報を発信することはカッコ悪い行為として差し控えています。
この例の様に情報の過不足があるかどうかをデザインのアイデアを集めたあと要素の整理を行う際にユーザーのリテラシーレベルをどのくらいに設定し、結果どの様にデザイン要素を制御するかはデザイナーまたはディレクターの腕の見せ所になります。
要素の洗練としてのデザイン行為
この様に整理した情報は、要素の洗練という工程に入ります。これは個々の要素のデザインレベルを製品コンセプトに合わせて磨き上げることです。
必要となった情報をどのような形態・カラー・質感でユーザーに見てもらうかを決める行為です。ここでは様々なデザイン方法が試されます。
グラフィック(例えばWEBのトップページ)であればBIの提示方法、ロゴやBIスローガン、プロジェクト毎のトップバナーに使うコピーライトのフォントやそのカーニング、イラストレーションなど、ユーザーの目に触れるすべての情報を制御します。
ここでは情報のオリジナル性とデザインポリシーなどを詳細に作り込みます。
情報のオリジナル性が出るまでデザインを洗練させる。これは非常に難しい作業です。
オリジナル性を感じるというのは見者に未視感を与えるということです。既視感からデザインをいかにズラすか。このためにはデザイン要素だけで未視感を出すのは難しいですが、要素としてもできる限り細かく検討を行います。
要素の整頓としてのデザイン行為
整理し洗練したデザイン要素にデザインの原理を掛けて上を整頓します。この行為もデザイン作業のなかで特に大切な行為です。というのもたとえデザイン要素としてBIがデザインテンション(くわしくはこちら)が高いロゴであっても整頓の仕方次第で全体としてのテンションは制御可能です。
実際に行う行為としてグラフィック(WEBのトップページ)であればBIの提示方法としてロゴやBIスローガン、プロジェクト毎のコピーライトの配置を考えます。その際に注意すべき点がユーザーすべて持っているゲシュタルトという心理作用です。ゲシュタルトは後で詳述しますが、人は知覚を受けた際にできるだけ簡単に咀嚼して認知しようとする心理的作用です。コピーライトを巨大に配置すれば、このWEBではプロジェクトでこのコピーライトに描かれていることが最も推したい内容だと認知しますし、トップバナーに使うフォントがクラシックなフォントであれば伝統的な印象を受けますし、フォントのカーニングが広ければ堂々とした印象を受けますし、イラストレーションや写真の大きさや配置場所など、使い方が大きく印象を変化させてます。
この整頓はグラフィックデザインであればレイアウトと呼ばれ、成果物として組版を作る作業です。
このようにユーザーの目に触れるすべての情報の配置を制御することが要素の整頓になります。
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