プロジェクトに与えられるリソース
リソースとは広辞苑によると資産。資源。とあり、プロジェクトに用意される資源は、いわゆる「ヒト・モノ・カネ」です。
リソースには製品の開発費としてスタッフの人件費や管理費を始め、量産する製品であれば材料費と加工代、また量産準備費として金型代や設備投資費用とこれらの償却費。材料や製品を在庫するための倉庫管理費、販売するための管理費、営業経費さらにプロジェクトを閉じる際の廃棄コストなど多岐に渡る費用が含まれ、これらを当初から資源として用意できるのか稼ぎながら回すのか、その際のキャッシュフローは滞らないのか、といったことをプロジェクトを始めるにあたり検討しておく必要があります。
これら検討によって「今回のプロジェクトでは製品を新規開発するリソースはなく、既存の製品の販売強化キャンペーンを打つなどプロモーションを行ったほうがコスパが良い」と判断する。など条件の整理によって進む方向は大きく変わります。ですからプロジェクト途中でリソース切れを起こしてプロジェクト中止や、プロジェクトの大幅縮小などが起きないよう、精度の高い検討が求められる重要なプロセスです。
「アイデアで何でもなんとか出来る」と思っている人ほど、この段階において少ないリソースでプロジェクトを初めてしまう傾向が見受けられます。私自身も若い頃は典型的なこのタイプで、どんな難問もアイデアで切り抜けられると高を括り、プロジェクト途中でリソースが切れて困ったことがありましたが、幸いインハウスだったため財務部門と調整することが出来ました。しかし投資家からの資金を集め製品開発を行った際のリソース切れは追加投資をお願いするために東奔西走することになるなど、リソース検証はとても大事なことを痛感しました。
これなどは明らか現在と将来の異時点間問題で将来起きることは割り引いて考えてしまうという「逓減的時間割引率の問題」だと思います。詳しくは「自滅する選択:池田新介著」をごらんください。
ヒト・モノ・カネ
ヒト
プロジェクトに関わってもらう人材です。プロジェクトの内容によって欲しい人材のスキルや知識・能力は大きく変わってきます。自社の既存ドメイン内でのプロジェクトであれば現有の人材でまかなえる場合が多いですが、新規事業の場合は外部リソースの活用も検討します。
携わる業務の種別としては、企画・デザイン・製品開発・品質管理・マーケティング・法務・財務・営業・カスタマーサポートなどあります。さらにドメインによって下記の様な人材も必要になります。
- プロダクトの自社製造であれば生産技術・生産管理・職人・作業者など
- アプリ実装ではSE・プログラマ・WEBデザイナ
- コンテンツ実装ではキャラクターや3Dデザイナ・テスター・サウンドクリエイターなど
また各所にディレクションできるディレクターが必要です。
またスキルと知識はプロジェクトをすすめる中でだけ勉強もできますが、仕事への情熱を生み出す力をつけることは非常に難しいと思いますので、人選には注意しましょう。
さらに多人数で組織を組んでプロジェクトにあたりますから人間力は必要です。熱意と人間力があれば大抵のことはできるようになります。
モノ
プロジェクトを実行するために必要となる「設備や情報など」で有形財産と無形財産があります。こちらもヒト同様、プロジェクトの内容によって大きく変わってきます。自社の既存ドメイン内でのプロジェクトであれば現有のモノでまかなえる場合が多いですが、新規事業の場合は外部リソースの活用も検討します。
有形のモノとして
- オフィスとスタッフが使用する機材、コンピュータ・ネットワーク・什器など
- 開発に必要な各種設備や装置、実験器具や計測器、治工具類
- プロダクトの自社製造では、工場、製造機械・検査器・各種設備、製品を保管する倉庫など
- 流通に必要な輸送手段や物流センター
- 小売のための店舗やECシステムなど
無形のモノとして
- 各種情報として現有の情報と新しく必要となる情報の入手方法をつかんでいるか確認します。
- 新しいドメインに挑戦する場合、プロジェクトで使用予定の技術やコンテンツなどの知的財産が法的に抵触していないか、また守れるか。プロジェクトで使いたいモノが知的財産で守られている場合使用許諾を得られるかなどを検討します。
カネ
プロジェクトを実行するために必要となる資金には自己資本と他人資本があります。また資金の使いみちとしては開業資金・設備資金・運転資金と分けられます。経営者やビジネスパーソンであれば詳しいと思いますので説明は簡略にします。
人件費はヒトに含まれるものとして、ここではプロジェクトを実行するために必要となる設備資金と運転資金について記します。
- 製品を開発する費用として設備投資費・経費など
- 製品を商品化する費用として設備投資費、生産準備費など
- 製品のマーケティング費用として広告宣伝費や営業経費など
- プロジェクトを閉じる際にかかる費用として廃棄損や諸経費など
この他にヒト・モノで検討した様々なリソースは全てカネに換算されて本検討事項に入ります。
フィジビリティ・スタディ
整序した所与の条件を元にフィジビリティ・スタディ(英:Feasibility Study)を行います。新たなプロジェクトを行うにあたり、製品にかけたさまざまなリソースを回収し利益を生み出せるかどうか、というプロジェクトの実現可能性と合わせて将来的な持続可能性を検証するプロセスです。
このスタディでは検証する内容は、自社の強み・弱みや、前述の「自社・製品・社会のスタンスと相互作用」で示した自社のスタンスと目的や価値観がズレていないか、業界を取り巻く社会的影響として当該のマーケット規模や成長率など多岐に渡ります。検証範囲は考え得ることすべてを網羅して行うべきで、他社の技術開発状況・関係国の政策・マーケットに現れる兆しなど、あらゆる視点から実施していきます。
プロジェクトにおいては開発できる技術的な検証も終え、目処がついている必要があります。
フィジビリティ・スタディは期間では決められませんが、全く新しい業態を起業した場合などは何を検討すれば良いかを決めることが大変ですから、実証試験などが必要となる場合もあります。
これらのスタディは常に中央値の検討に合わせて、楽観値と悲観値を検討し、確からしさに幅をもたせます。そのうえで想定した様々な因子が悲観値に振れた場合でも事業可能性が成立していることが望ましいですから、プロジェクトに与えられた条件下で考え得るシミュレーションを行い、リスクを明らかにして、代替案の検討も含めスタディを繰り返し最適案と納得するまで実施します。
ではまた!
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