製品コンセプト制作概要

concept-design デザインディレクションとは

製品コンセプトの制作プロセス

 本ログではデザインを決めるディレクションについて記すことがメインテーマですので、(製品コンセプトが出来ている前提で記しています。)本ログは製品コンセプトを制作するプロセスの概要について説明します。

 製品コンセプト制作の詳細は別途まとめて記します。

Fig.3

製品コンセプトの必要性

 製品開発を複数のメンバーで行うためには、プロジェクトに期待している情報をより正確に捉えてメンバー間で共有する必要があります。まだ開発される前の製品の姿はありません。まだ見ぬ製品を表現するためには、言葉で製品を表す必要が出てきます。製品に求める特徴を言葉で表現した製品コンセプトはデザイン開発の起点として無くてはならない情報です。

 その言葉についてですが、例えば「雪」と言っても想起するイメージは人によって変わります。「白い」「冷たい」「結晶」・・・このように雪の持つ特徴を概念化し直接的に表現する言葉があります。また「積雪」「冬」「北国」と雪にまつわる言葉を組み合わせ連想される言葉などさまざまです。

 これら個々の言葉における表現はヒトが認知することで意味を持ちます。これが概念になります。概念とは広辞苑によると「①事物の本質をとらえる思考の形式。事物の本質的な特徴とそれらの連関が概念の内容(内包)。概念は同一の本質をもつ一定範囲の事物(外延)に適用されるから一般性をもつ。・・・②おまかな意味内容。」とあります。雪の例では白い・冷たい・結晶が内包で、雪が外延になります。

 製品コンセプトを考えることは言葉での表現を考えることですから、イメージを概念に細分化し、詳細に意味を設定して関係者で共有する作業が必要になります。そして、これらの意味合いを積み重ねて作り上げた概念の塊が製品コンセプトです。

 次は製品コンセプトを作っていく制作プロセスをみていきましょう。

概念の洗い出し

 これらの数多くの概念は塊となってひとつの製品を表します。この製品を構成する概念をそのカテゴリーから分けると大きく6つあります。1)実体概念2)機能概念3)属性概念4)価格概念5)形態概念、6)抽象概念です。

 製品コンセプト制作には、必要と期待されている考え得る概念すべてを洗い出し各々の6つ概念に分けていきます。

製品のポジショニング検討

 洗い出した概念のうち1)実体概念 ~ 4)価格概念の4つの概念は製品の相対的な立ち位置(ポジショニング)を表しますので、まずこの点を検討します。

 ポジショニングは製品企画の根幹を作っています。ここでコンペチタが真似のできないポジショニングが実現できれば非常に強いコンセプトになります。

突出させる概念と優先順位の検討

 ポジショニング検討の次に抽象概念を検討します。ユーザーに認知して欲しい抽象概念の中からプロジェクトで最も強く推し出したい概念群の優先順位を決めます。

 このなかには前述のポジショニングを決めている概念の中に、この最も強く推し出したい概念が含まれている場合もあります。

 この突出させた概念をユーザに上手く伝えることが製品開発の最も大切なところです。

 この大切な製品コンセプトは、製品を形作る様々な概念がレイヤー(層)になっており、各レイヤーは製品コンセプトに従い優先順位の高い概念から前面となり、優先順位次点の概念がその背面に重なり、その次の優先順位の概念が更に背面にまわり製品全体の概念の塊を作っています。

 仮定した塊が製品全体を表し、なかでもユーザがこの塊を見た際に最も色濃くはっきりと見える概念群が製品コンセプトになります。最も色濃く見えるということはその概念が見えやすく強調されて前面にレイヤーとして優先順位に応じて重なり、ユーザーに認知され易いようにユーザに向いて突出しているイメージです。ですから概念の優先順位が変わると同じ突出した概念の集合体でも見え方が大きく変わるため、優先順位はとても大切です。

 これらの概念が関係性に従って認知の集合体になることを心理学ではゲシュタルト効果といい、ゲシュタルトは個々の概念の総和よりも大きくなります。これが後述するレバレッジ(テコの作用)と絡んで強大なイメージを構成する原理になります。詳しくは別項で後述します。

レバレッジ検討

 突出させる概念と優先順位をより強くアピールできるよう、ユーザーが持っている本質的価値や情動に訴えるポイントのなかで、インプット量がレバレッジ(テコの作用)が有効に効いて大きなアウトプットを生み出すポイントを考えることがレバレッジ検討です。

 このレバレッジとは前述のゲシュタルト心理学にある原理を使い、比喩(メタファ)により生み出されるのですが、その際に概念の組み合わせ方によって、ユーザの認知が元の概念の数倍~数百倍と変化することを利用します。

コンセプトの構造化

 製品コンセプトを構成する概念の関係性と方向性について、判断規準にしたがって集散化を行い、相対的な優先順位を決めることで製品コンセプトの構造化を行います。

 この構造化によって製品コンセプトをわかり易くして認知のズレを少なくしていきます。

製品コンセプト決定

 構造化した製品コンセプトを分かり易い言葉に置き換えて整えます。必要であればコピーとして成立するような強い表現のスローガンも作ります。

製品コンセプト制作概要のまとめ

 製品コンセプトは製品づくりにおいて、とても大切なクリエイションの起点になる情報です。

 そのためこのプロセスにデザインディレクタも参加するべきですが、ここでデザインディレクタがデザインファーム所属などの場合は、デザイン開発を行うプロセスからプロジェクトに参加する場合がありますから、プロジェクトを深く理解するための作業として製品コンセプトの分解が必要になります。このログではデザインの評価方法において、製品コンセプトを分解し、デザインディレクションを如何に行うかについて記していきます。

 また優れたコンセプトを制作するための方法について、具体的にどの様にすれば強いコンセプト制作ができるかについても別途記す予定です。

 ではまた!(2024.1更新しました)

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