デザイナー選定のポイント

point-of-the-designr-selection デザインディレクションとは

デザイン発注先により異なるスタンス

 デザインをデザイナに発注する依頼先の違いについて、メリットとデメリットをまとめました。(ちょっと極端に記しています)

 デザイナを選ぶには様々な方法がありますが、デザイナがインハウスデザイナとして社内のいる場合と外部へ依頼する場合で大きく異なります。

自社のインハウスデザインに依頼する場合

 プロジェクトを始める際にデザイナをプロジェクト専任という形で包括的にタッグを組めれば、時間の許す限り、どのような要望にも対応してくれて、至れり尽くせりの関係ができるでしょう。意思の疎通も十分出来ますし、社内との技術調整もやってもらえるので効率が良いのですが、デザイナ自身のデザインクオリティが高いスタッフは人気があると思いますから、お目当てのデザイナを確保できるかが問題となります。

メリット

  • 自社の価値観を分かっているので従来の延長線上のデザイン提案は得意。
  • 社内との技術調整はデザイナが担うためデザイン変更や修正の小回りが効く。
  • デザイナの日常を垣間見れるのでデザイナの価値観が分かる。
  • 予算に対して割り当てられる時間があまりシビアではないのでデザインに付随した話が気楽にできる。

デメリット

  • デザイナは同僚なので忖度しないためデザイン批評を厳しくしすぎると、怒り出し面倒くさいこともある。
  • 使えないデザイナでも教育を兼ねて最後まで使う義務が生じることがある。
  • デザインディレクタとデザインマネージャ(デザイン組織の長)のどちらにディレクション責任があるかが曖昧になりやすい。
  • ディレクションが悪いとデザインクオリティが上がらず、最良のデザインに到達できない。

外部のデザインファームへ依頼する場合

 デザインファームの営業担当とデザインディレクタとデザイナがチームを組んで、どんな要望にも対応してくれて至れり尽くせりの関係ができるでしょう。しかし返事が良くても意思のズレが収まらず、補正に時間を費やしてしまうことが多くなりますから注意が必要です。またデザイン提案をもらいプロジェクトが一旦終了となると、中途半端なところでデザイン開発は終了し成果物も中途半端になってしまうので厳重なスケジュール管理が求められます。

メリット

  • 自社にない価値観での提案を得られる。
  • デザインファームの面子にかけてデザインクオリティは一定ライン以上には仕上げてくれる。
  • デザインディレクタにディレクション責任があることが明確にできる。
  • デザイナがホストサイドなのでデザインを批評しても表向きは怒らない。

デメリット

  • デザイン仕様書までを依頼範囲とするため、量産準備へ上手に引き継げるデザイナまたは技術者が必要。
  • デザイン仕様書が確定したあとのデザイン変更や修正が難しい。
  • どこまでデザインクオリティが上がるかはデザインファームのデザインディレクション次第。
  • 予算に対して割り当てられる時間がシビアでなのでデザインに付随した話も充分にコミュニケーションできない。
  • デザイナの日常を見られないのでデザイナの本当の価値観は分からない。

外部の有名デザイナーを起用する時に注意すること

 この流れは、企業トップからトップダウンで決まることが多くなると思います。プロジェクトの条件として従来とは異なった視点からの提案を期待して著名なデザイナを試すことを指示されるパターンが多く、私も何回かこのような著名なデザイナと一緒に仕事をさせてもらいました。

 確かに著名になるだけのことはあって面白い視点からの提案をしてくれます。またその提案してくれたデザインも素晴らしいクオリティでした。しかし現場が困ることが多くあります。

 それは提案がその企業の過去から現在までのコンテクストからズレていまるからです。それは当たり前です、新しい視点を提供してくれたのですから、そして現行製品とデザイントレンドが合っていません。これも当然起こりうる事です。

 そして価格も合わないことがあります。スターティングの価格帯の製品をお願いしたのに、作り方が異なることでコスト高になってしまい。プライスのポジショニング体系が合わなくなってしまう。

 このような帳尻合わせは現場でお願いと振られ、困った挙げ句、利益を減らして商品化することが多いと思います。話題性は高いので業界では評判になるのですが、自社のコンテクストを無視した流れによって製品群は浮いた存在となり、一代限りでシリーズ化できないという徒花企画になってしまう可能性が非常に高いので注意が必要です。

 これらを回避するためにも、著名デザイナとは長期に渡る製品群を作る予定で付き合うことが望ましく、これができれば双方のメリットは大きいと思います。

デザイナの選定

 デザイナはインハウス、外部デザインファームを問わず得意と不得意があります。

アドバンスデザインが得意(ゼロから1を作ることが出来るデザイナ)

メリット

  • とにかく新しいアイデアを提案してくれる。
  • デファクト(主に経済合理性から導かれた)を覆したデザインを提案してくれる。
  • 先入観なく形態が考えられるため既視感のないデザインを提案してくれる。
  • 技術的に無茶なスケッチは開発目標に使える。

デメリット

  • 技術的に無理な無茶なスケッチを描くので使えない事が多い。
  • 解領域を指定しても無視されることもあり手戻りが多く時間のロスに繋がる。

仕様に従って描き分けられるデザイナ(1から10を作り出せるデザイナ)

メリット

  • デファクトとなっているデザインの範疇でテイストなどを変えてマーケティング戦術に乗せた旬なデザインが描ける。
  • 製造が作り易くコスパも考慮して素材や製造方法を考えつつデザイン仕様を考えてくれる。
  • そつがなく無駄になるスケッチを描かない。

デメリット

  • 既視感のあるデザインになりやすい。
  • 新しい情報に疎いこともある。
  • センスが?な場合もある。

製造とのつなぎが旨いデザイナ

メリット

  • 製造とのつなぎが旨いことが多く量産へ向けて頼りになる。

デメリット

  • 新しい価値観を持ち込むことが苦手。
  • 製造の基準に従って描くのみ。

 以上からデザイナの選定には注意が必要ですが、私は意識的に上記の得意分野が違うデザイナを混成しアサインしチームでプロジェクトにあたってもらうことを多く行いました。結果はうまくいったことが多かったと思います。

 ではまた!

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