デザインゴールの仮設定
デザインを決めるディレクタであるあなたが、次に考えなければいけない大切なプロセスは「ゴールの仮設定」を行うことです。
これまで、デザイナへの一連の説明は企画者であるあなたが製品のデザイン開発のイニシアチブを取りながら、「自身の中にある “ こんな製品になって欲しい ” とぼんやり抱いているイメージ」を説明してきたと思います。デザイナには企画者の持つ “ こんな製品になって欲しい ” という “ デザインイメージ “ を超えるデザインを生み出してもらうことがプロジェクトでデザイナと協業する目的です。
これまでのデザイナへの一連の説明はビジネスパーソンで企画者であるあなたが製品のデザイン開発のイニシアチブを取りながら、デザイナとの協力関係で「自身ではぼんやりとしている完成イメージを超えるデザインを生み出したい」というモチベーションが元になっています。
デザインの専門外のあなたも、ここまで製品コンセプトを中心に製品について深く考えてきたので「自身でぼんやり感じているデザインの完成イメージ」の輪郭ぐらいは見えてきているのではないかと思います。
そのデザインイメージをデザイナに精度良く伝えるためには、製品の解領域をさらに絞り込んでおくことが大切です。言い方を変えると「完成形のイメージを伝えられる情報に整えること」です。
デザイン開発に向けてゴールを絞り込むとは
このデザインゴールを絞り込む理由は、これからデザイナと始めるデザイン作業でデザイナのアイデアを研ぎ澄ますためです。求めているデザインの範囲を、狭く追い込めば追い込むほどアイデアは深くなります。逆に求めるデザインの幅を広く取ると、アイデアの際限がなくなり、アイデアは多数出てきますが浅いアイデアになってしまいます。ですからデザイナへデザインを依頼するときには出来る限り、デザインの検討領域を狭く取ることが必要です。
このゴールの仮決定で、どの程度の解像度まで完成形のイメージを持っておくべきでしょうか。ゴールを絞るといっても「〇〇に似せてほしい」「この写真のようなデザイン」は最も悪い伝え方です。企画者であるあなたの考えをうまくまとめる方法を考えましょう。
ただし、デザインを依頼する範囲が先進的なアドバンスデザインである場合は、デザインゴールの仮設定は必要ありません。なぜならこのデザインゴールの可能性を探る仕事そのものがアドバンスドデザインの目標だからです。
製品コンセプトをデザイン要素とデザイン原理へ割り付ける。
製品がプロダクトの場合、伝えるためのテンプレートとして言葉で表す方法のひとつが、デザインの3要素と言われる「 FCM 」と、デザインを割り付ける5原理「PBREH」を掛け合わせです。この表現方法で、企画者であるあなたのイメージしている製品のデザインを表現してみましょう。
デザイン3要素(製品のどこを)
- F(Form):形態
- C(Color):色
- M(Material):素材
デザイン5原理(どのように表現するか)
- P(Proportion):プロポーション
- B(Balance):バランス
- R(Rhythm):リズム
- E(Emphasis):エンファシス・強調
- H(Harmony):ハーモニー
デザイン原理について詳しくはこちら
この両者を掛け合わせると
この組み合わせを3要素ごとに5原理の高低は以下の表になります。
デザインゴールの仮設定は「デザイン計画」になる
デザインゴールの仮設定は、今まで述べたデザインの3要素の「どの部分で*どのように表現したいか」というイメージをまとめることです。このステップはデザインディレクタとデザイナが一緒に考えることで、デザイナにさまざまなイメージを湧かせてもらうツールとして大変有効です。またこの作業をデザイナと共同で行うことで、あなたの「自身でぼんやり感じているデザイン完成イメージ」もまとまってくるはずです。
そしてデザイナと共同で「3要素*5原理」を作った場合でも、デザインディレクタであるあなたがここでゴールの仮設定を決め、「デザインのゴールはこれで仮設定します」と責任を持って宣言しましょう。
なぜ宣言するかというと、デザインゴールの仮設定はデザイン計画となり、デザイン案を批評し決めていく際の判断規準として使うからです。
プロジェクトでは製品コンセプトを作りました。本項の過程を経て製品コンセプトを具現化するための方策を、デザイン計画としてまとめました。デザイン計画は製品コンセプトを具現化する設計図となり、デザインを評価する際の判断規準の元となります。そのことをデザイナに説明して理解を得ておきましょう。
ではまた!
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