製品コンセプトとユーザーに強く認知して欲しい概念とは
製品コンセプトをデザイナに説明するときは「ユーザーに強く認知して欲しい概念とその優先順位」が大切です。
この「ユーザーに強く認知して欲しい概念」は前項のポジショニングも含み、製品コンセプトの中でレバレッジを掛けて最も顕在化させたいポイントです。
ここではこの顕在化させたいポイントをデザイナに深く理解してもらい、デザインイメージがたくさん湧き上がるように説明するノウハウを記します。
その際に最も注力するポイントは先に説明した「優先順位を明確に説明する」かつ「6つの概念を全てを含む」ことです。
実体・機能・属性・価格の各概念を埋める。
まずは製品コンセプトのワードを手がかりにこの4つの概念をしっかりと埋めていきましょう。これは前項の製品ポジショニングの指定(くわしくはこちら)をご覧ください。
アピアランスを手がかりとした概念評価表の紹介
次に製品コンセプトに含まれる抽象概念や形態概念を顕在化させる方法として活用できるオスグッドが提唱したSD法による「アピアランスを手がかりとしたブランド概念評価表」Fig.4を紹介します。
この本は絶版ですが大学図書館などにあります。またこの表は記載されていませんがSD法については同じ著者の心理学に記載されています。
この表は製品コンセプト製作時も使います。
この表は以下の手順で作られています。
この表はブランド概念を評価する目的で作られたもので、以下は出典元からの引用になります。「当該コンセプトの種類に関わる情緒的特性用語を収集して、尺度群を作成したもの」で、「SD法では情緒的特性のいずれかについて偏好が見られる被験者を選出し、具体的なコンセプトを提示して得られるSDデータを個人別に因子分析し、偏好次元の種類を把握しその種類ごとに、偏好強度の点で正規分布するような同数者の被験者集団を構成します。被験者集団へ具体的なコンセプトを提示して得られるSDデータを一括のうえ因子分析を行う」とあります。
ここでは製品コンセプトが持つ抽象概念を、この情緒的特性の偏りとみなしてデザインディレクタとデザイナでブランドの概念を共有するためのツールとして使います。
そのため、プロジェクトで洗い出した概念をこの表に追記して使いますから、キーワードの収集は慎重に、漏れのないように注意します。評価の際も概念評価表に当てはまる情緒的特性用語がない場合は、被験者が自由記述という形でその用語を随時追記できるようにしましょう。
また当該製品の製品コンセプトに情緒的特性用語にある因子が存在しない場合は、その旨を明記してもらいましょう。因子が存在しないことと、概念の対極性が高いことでは意味合いが異なりますので注意が必要です。
例えば保守的な感じが最大ということが、そのまま進歩的な感じが最小とはなりません。とても保守的なアピアランスに見えながら進歩的な概念を持っているということは十分にあり得ます。
この評価はブレインストーミングの形態で行っても良いですし、デザインディレクタが自身の考える製品コンセプト像を表にしてデザイナに提示し議論することもおすすめです。
この概念評価表は一般的な製品に対して、見た目(アピアランス)だけを手がかりとして、ユーザのイメージに重み付けする方法なので、特殊は製品を企画した際には評価項目を適宜増やしたり、しっくりこない評価項目を外して使うことをお勧めします。ちなみにこの表は全部で47因子があり、評価性・情緒性・バランス因子・怜悧性・親近性・時間因子の6種類に分類されています。
アピアランスを手がかりとした概念評価表による製品コンセプトの解析
これらの因子を各々5段階(全くその通りではないーその通りではないーどちらとも言えないーその通りであるーまさしくその通りである)から7段階(全くその通りではないーあまりその通りではないーややその通りではないーどちらとも言えないーややその通りであるーかなりその通りであるーまさしくその通りである)で採点を行い、当該製品に持たせたい特徴の因子については重み付けを高くし、それら特徴点となる因子に優先順位を割り付けます。
このようにして割り付けられた概念から、特にポイントが高い概念が突出させたい概念、つまり特徴点となります。これらの優先順位をユーザからの視点で見直した時に最も色濃く見える概念、または概念群が製品コンセプトになりますので確認しましょう。
この際、突出させた概念の反対の概念のポイントが低くなっていることも確認しましょう。もし反対の概念のポイントが低くない場合には、別の概念が混在している可能性がないか検討してください。
アピアランスを手がかりとした概念評価表の個人差について
このアピアランスを手がかりとした概念評価表は、個人の認知の差を含むことは仕方のないことです。個人にはそれぞれ個性となるバイアスがありますから受け取り方に差異がでることは止むを得ません。
これらバイアスがかかることはユーザが持つ情動と本質的価値との結びつきと、その結びつきの強さによってレバレッジ(テコの原理)が掛かり大きく変わってきます。
バイアスの違いが大きいということは、被験者が持つ情動と本質的価値のどのように結びついたかに直結しますから、ターゲットとなるユーザクラスタを想定して採点することはもちろんですし、ターゲットユーザと似たクラスタの被験者による採点のほうが精度が上がります。できれば想定クラスタの疑似ユーザをリクルートして調査したほうが制度が上がりますのでお勧めです。
この製品コンセプトの認知の仕組みについては仔細に別の機会に記していきたいと思います。
次項ではデザインゴールの仮設定について考えます。
ではまた!
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