デザインを決めるとは
難しいと思われているデザインですが、ビジネスパーソンで企画者であるあなたは製品を概念化しデザイナーやステークホルダーに伝えられるようになったら次は、デザインを決めることが求められます。
本ログ前項の「デザインセンスに自身がない」というトピックと関係しますがデザインを決めるとき、まずチェックしなければいけないことは、製品の概念のなかで最も強く打ち出したい概念、すなわち製品コンセプトに当該のデザインはどの程度合致しているかを判断することです。
製品コンセプトをデザインがうまく表現できているか。この判断も最初は難しいと感じるかもしれません。
企画者であるあなたが強力な決済権を持つ経営者であれば、担当者が決めた製品コンセプトを承認し、それに応じて開発したデザインに対して、デザインが良くないのはコンセプトに無理があったとしてコンセプトに遡及して否定し自身のアイデアに変えてしまうことも可能です。これはデザインレビューといった業務ステップを規定していない企業のビジネスパーソンから良く聞く課題でもあります。
事業責任者である経営者やビジネスパーソンが、自身の事業で用いるデザインを自分の好みで決めることになんら問題はありません。しかし企画を一緒に考えたスタッフやデザインを一生懸命に考えてくれたデザイナーは納得しないでしょう。納得させなくても仕事として進めることは出来るますが、これらの専門職の人たちは製品コンセプトに見合った製品を作り込んできてくれているはずです。その道のプロの仕事ですから、良いところをうまくすくい上げて、みんなの総力を結集して製品を作り上げた方が良いモノに仕上がる確率は格段に上がります。
事業責任者であるあなたが製品開発で実行すべきことは、製品コンセプトの優先順位に従い、デザインが如何に上手く具現化できたかを評価するという一点です。もし製品コンセプトを超えるアイデアがデザインされた場合は製品コンセプトを代えれば良いことです。
そのために自身のセンスを発動してデザインを決める前に、製品コンセプトに沿って評価する。この基本をまずは守っていくことが大切です。
デザイナーとデザインの話が出来るスキルと知識
デザインを決めるとはデザイナーと向き合って方向付けをしていく行為ですから、デザインという専門性についてデザイナーより上位のスキルと実績が必要だと考えていませんか。
この問題を考えるためにディレクタとマネージャの違いについて考えてみましょう。
レストランで例えるなら、マネジメントを行う人が調理を担当するシェフよりも料理が上手である必要はありません。マネージャは厨房・ホールなどお客様とスタッフの全体を見て、レストランを適切に切り盛りし管理できればよいのです。
次にディレクションを行う者は、スタッフよりあらゆるスキルが抜きん出て上手でなければならないのか?という問題です。
レストランの例では、料理のメニューや揃えるワイン、デザートの構成、店頭ファザードや店内の雰囲気、そして料理の決定がディレクタの仕事になります。個人経営では経営者がこの任に就きますが、シェフよりも料理が上手だったりインテリアデザイナーより上手にスケッチが描ける必要はありません。レストランのコンセプトという魅力を最大化するために、ディレクタは全体観が指示できることが大切になります。
またもう一つの例としてスキルで勝負する世界を考えてみましょう。武術の師範、スポーツのコーチや監督は選手より技術や能力が高いのでしょうか?そんなはずはありません。ではなぜ教える立場にいるのでしょうか?それは選手の克服すべき課題を見つけることができ、どのようにしたら長所が伸びるのか、短所が直るのかなど、良い結果に導く方向付けが出来るかが大切です。ここでも選手の全体像を見抜くことが大切なことが分かります。
ですからデザインを決めるディレクタはデザイナーよりも製品スケッチを上手に描ける必要はありません。製品開発において製品コンセプトという魅力を最大化するため、全体観が指示できることが大切であり、求められていることです。
しかしディレクタは絵が描ける必要が無いということはありません。デザインの方向性をデザイナーに説明するための情報を共有するための手段として言葉による説明と併せて、言葉にできないイメージを伝えるビジュアルを用意したり、スケッチを描いて説明をサポートする能力が高ければ更に良いことは間違いがありません。描き方のコツや練習方法については後述します。
しかしこれらスキルの前に最も大切なのは企画を絶対に成功させるという熱い思いです。この熱い思いがあれば絵が上手でなくてもデザイナーに気持ちが通じチームとして仕事が成立します。
デザインを決める覚悟
デザインに対する責任の範囲はどうでしょうか?製品のデザインについての全責任はデザインを決めるディレクタにあると思わなければなりません。
製品コンセプトが曖昧でキレが悪い場合、それを受け継いだデザインコンセプトのキレが悪くなりますし、最終成果物であるデザインはもちろんグズグズになってしまいます。
またデザイン戦略や計画に沿わないデザイナーをアサインをすればイメージ通りにデザインはあがりません。
さらにデザインのクオリティが上がらないとき、デザイナーから良いアイデアが提案されないとき、結果はデザインディレクタの責任になることは覚悟しましょう。
ですからデザインディレクタは、日頃からさまざまな製品を見て考えデザインを言葉にする練習を行い、自分が良いと思うデザインやデザインのアイデアを集めるなど、日々の勉強を怠らずに鍛えていきましょう。たくさん見て考えた総量が覚悟を作るといっても過言ではありません。デザインディレクタの覚悟はデザイナーなどのスタッフに伝搬しチームワークを生みますから非常に大切です。
ではまた!(2024.1更新しました)
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