(A1)ポジショニング評価
まず始めに製品を主に使ってくれるユーザーの属性や、製品が属すると思われるカテゴリの中で、ポジショニングは適切に置かれているか、またそのカテゴリーの位置づけは適切かを評価します。
架空プロジェクト「高付加価値デジタイザペン」
わかり易くするため例題として架空のプロジェクトを設定し、このプロジェクトに沿って説明していきます。
架空のプロジェクトは「高付加価値デジタイザペン」とします。ここでは例題なので言葉での評価規準のみを記しますが、実務ではイメージをより鮮明に伝えるためビジュアルの併用も行います。
デザイナへインプットした製品コンセプト
以下がデザイナにインプットされた製品コンセプトです。
「高機能デジタイザペンを、アトリエだけで使用する描画専用ツールから、小型液晶タブレットの普及に伴いアトリエ外で使うことを喚起するため、プロツールらしさを想起させながら、堂々かつ華やかな佇まいを持つことで、周囲にモノに対するこだわる審美眼を持つ、クリエイタであることを顕示でき、所有する喜びを持てる、プレミアムデジタイザペン」
ここから評価規準を作っていきます。
製品コンセプトから評価する準備
製品コンセプトから製品を評価するものさしとなる判断規準を決め、その規準の中での評価基準を決めていきます。このためには製品を構成する様々な概念を6つの概念に展開し優先順位を付ける準備をします。まずは製品コンセプトのキーワードを読点で区切られた文の単位に分け、個々の文が何を指し示しているか連想していきます。
前述の製品コンセプトは10の文の単位からできていますので、以下のスラッシュで分けて考えます。
/ 高機能デジタイザペンを / アトリエだけで使用する描画専用ツールから / 小型液晶タブレットの普及に伴い / アトリエ外で使うことを喚起するため / プロツールらしさを想起させながら / 堂々かつ華やかな佇まいを持つことで / 周囲に対してモノにこだわる審美眼を持つ / クリエイタであることを顕示でき / 所有する喜びを持てる / プレミアムデジタイザペン /
(a)高機能デジタイザペンを
属性はタブレットで使うデジタイザペンである。高機能な製品ということから多機能またはスペックの高い製品であることが分かります。
(b)アトリエだけで使用する描画専用ツールから
アトリエという言葉からユーザは作画を生業としているプロフェッショナルまたはハイアマチュアで、こだわりを持ってペンを使っていることが分かります。
またアトリエ内で誰にも見せずに使っているので、描き易いようにペンにクッションを貼ったり、描き易くて気に入っているペンであれば、製品の一部が割れていても補修して使っているかもしれません。
(c)小型液晶タブレットの普及に伴い
タブレットから液晶タブレット(液タブ)の普及によって(d)を補強しています。
また液タブを一緒に使うということは一緒に携帯できる方法、またはコーディネイトが求められていることが分かります。
(d)アトリエ外で使うことを喚起するため
ここからは今までと違い、人に見せることをユーザは製品に求めていますから、ユーザは周囲の人たちから格好良いと思われ、同業者からは一目置かれることを望んでいます。
(e)プロツールらしさを想起させながら
プロツールらしさ、からこのペンは描き易いことを最優先して作られていることをアピールする必要があることが分かります。
さらにアマチュアの方から憧憬の対象にもなって欲しい製品を期待しています。
(f)堂々かつ華やかな佇まいを持つことで
堂々とはサイズ感(長さ・太さ・重量感)を大きめにする必要があります。(e)プロツールの項と(d)外で使う相関関係から携帯性を良くするために小型化という要望とトレードオフになり、ここでは堂々というキーワードを活かせば大きいペンをデザインするべきと考えられます。
(g)周囲にモノに対するこだわる審美眼を持つ
ユーザは自己顕示欲が高い方である可能性が高いため、周囲の同業者に対して自分はタブレットの付属品のクオリティでは満足できない審美眼を有していることを顕示できることが必要です。そのためにはコスト高も許容してくれそうです。
(h)クリエイタであることを顕示でき
この製品を使っている自分は「新しいものを創造することができる才能を持っている」ことを周囲に顕示したい願望を持っていることが分かりますから、目を引く特徴ある形態・カラー・質感を期待している可能性があります。
(i)所有する喜びを持てる
所有することが喜べるということは、このペンが周囲のクリエイタも認知しているプレミアム感をはっきりと顕示する記号性を冠するものであることが求められている可能性が高いです。
(j)プレミアムデジタイザペン
ユーザは(e)(f)(g)(h)(i)を全て包含するワードとしてデジタイザにプレミアムポジションを与え、自身がこのペンを持つことでプレミアムなポジションにいることを主張したいと望んでいます。
以上が製品コンセプトから抽出した概念です。これらを実体概念・属性概念・機能概念・価格概念・抽象概念・形態概念に一覧できるように分けていきます。
アイデンティティ評価としてのポジショニングを表した6概念の一覧
以下製品のアイデンティティ評価としてのポジショニングを表した6概念の一覧になります。
Fig.9
長くなってきましたのでアイデンティティ評価へ続きます。
ではまた!
コメント