認知性
製品を使う際に製品のアフォーダンスは適切か、シグニファイアは的確にデザインされているか、UIは認知しやすいかを評価します。
アフォーダンスとシグニファイア
本項では製品から一連のアフォーダンスが発せられるなかで、適切なアフォーダンスと余計なアフォーダンスが、デザインによって制御できているかという評価規準と、ユーザに適切な認知を与えるシグニファイアがデザインされているか評価するための規準づくりについて考えます。
広辞苑によればアフォーダンスは「【affordance】(affordは「与える」「提供する」の意)環境や事物が、それに働きかけようとする人や動物に対して与える価値のある情報。アメリカの心理学者ギブソン(J. Gibson1904~1979)の用語」とあり、-anceを語尾につけて名詞化しています。このアフォーダンスは人に対して知覚として刺激を与える側、つまり製品側の情報に限定して使う用語です。
対してシグニファイアはアフォーダンスという刺激を受けた人が、自身が持っている情動や百科事典的知識やイメージスキーマを活用して認知した情報を指しています。つまりユーザ側の情報認知に限定して使う用語です。
デザインディレクションでの認知性評価のポイント
評価する認知性とは、製品を使う際に製品が持つアフォーダンスが、製品を使うためのインターフェースであるシグニファイアへ適切に誘導しているか、またシグニファイアがその後の操作を適切に誘導しているかがポイントになります。
- デザインはアフォーダンスを分かりやすくコントロールしているか
- 分かりやすいシグニファイアがデザインされているか
デザインはアフォーダンスを分かりやすくコントロールしているか
製品デザインが生み出したアフォーダンスを全て洗い出し、ユーザに製品の適切な使用方法の認知に向かわせるアフォーダンスと、不適切な認知を誘因するアフォーダンスに分けていきます。
製品の適切な使用方法の認知に向かわせるアフォーダンスとは、製品を使うために製品に用意したシグニファイアとなるインターフェースにユーザーを迷わずに導き向かわせるアフォーダンスを指します。
例えば単機能な製品であるハンマーを例にすると、鉄の塊であるヘッドは、鉄をむき出しにしてヘッド部の硬さと重さと冷たさをアフォードしていますから、ユーザが握るところではないことをアピールしています。対して木材で作られたグリップ部は手に優しく冷感を感じないであろうというアフォードと、手で握るのに適した太さであることを主張し、総合的にユーザに「グリップ部を持って」とアフォードしています。
Fig.14(A)
対して不適切なアフォーダンスとは、製品を使うために製品に用意したシグニファイアとなるインターフェースに、ユーザーの視線や動線を向かわせないようにするアフォーダンスを指しますから、ハンマーの例では不適切なアフォーダンスはありません。
シグニファイアは分かりやすくデザインされているか
ハンマーを例でいえば、手に優しく冷感を感じない木材があり、握るのはこの木材部分であることをアフォードし、そのままこの部分を手で握るのに適した太さにすることで、シグニファイアとしてグリップ部が作られます。この例は単純なのでアフォーダンス=シグニファイアになりますが、形状・色・質感が変われば次のようなことが起き得ます。
- (A)上記の既視感のあるハンマー(上図)です。ユーザは迷わずに木材製と思われるグリップ部を持ち、ヘッド部分で釘を打ちます。
- (B)質感を変えてヘッド部に木目をプリントし、持ち手を鉄製のようなテクスチャーに塗装してあるハンマー(下図)。
Fig.15(B)
これは何をする製品なのかユーザは迷います。形状からハンマーかなと思っても、どこを持つのか直感では分からないことが想定されます。
ハンマーの例と同様ですが、大きさ、重さも過度にデザインするとユーザに間違ったアフォーダンスを発信してしまいます。重さを例にすると、ユーザが想定した重さよりも非常に重い製品を作ってしまった場合、ユーザが製品を移動させようと思い持ち上げた際、予想に反してバランスを失って落としてしまい、事故につながる事が懸念されます。このように重いモノはユーザに「重いぞ」と知覚してもらうアフォーダンスが必要です。
これも機能と性能というユーティリティを満足するために必要な項目のチェックリストを用意して漏れがないように注意しましょう。
次は操作性について記していきます。
ではまた!
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