オリジナリティ評価

design-quality-evaluation-originality デザインディレクションとは

オリジナリティ評価

オリジナリティ評価をデザインクオリティ評価に分類した理由

 オリジナリティとは独創であり、広辞苑によれば「模倣によらず、自分ひとりの考えで独特のものを作り出すこと」とあります。

 プロジェクトでは、製品を新しく生み出す存在理由が必要です。その中で新製品にオリジナリティは必要か。という問いが出てきます。オリジナリティとは視点をどこに置くかで変わります。

 デザインディレクタとしては新たに作る製品ですから、何処かにオリジナリティを付与したいところです。

 開発する製品が、他社に先駆けて世界初の新しい試みを上市する場合は、その開発内容は特許の対象となる可能性があります。特許は取得するための審査規準として、進歩性と新規性を求められます。このため特許を取得できる製品であれば、進歩性と新規性を存分に活かしたデザインを行うことでオリジナリティは生まれるので、MAYA理論を忘れずにチャレンジしていきましょう。

 また企画が既に製品が業界内で存在していて、自社も同等の製品を持ちたいという場合もあるでしょう。業界では既知であっても、自社にとっては新しいということで十分に新製品としてオリジナリティがあると肯定することはできます。一般的にはマーケティング面からこちらの企画も多く存在すると思います。

 このようにオリジナリティ性は求める目標によって異なります。ですから本項でのオリジナリティとは、後者の既に製品が業界内で存在していて、自社も同等の製品を持ちたいという企画で、新製品開発としてプロジェクトに移行したものについて記します。つまり特許取得が可能なレベルの高いオリジナリティについて言及するということではなく、デザイン制作の中から生まれる表現としてのオリジナリティ性を評価することを指しています。

 そのため本ログで記す以降のオリジナリティは、デザイン開発を行う中で「デザインクオリティを向上させる目的で製品を磨き上げる作業の中から生み出されたオリジナリティに限定」しますので、オリジナリティをデザインクオリティ評価の中に含めて記すことにしました。通常のデザイン開発の中で、コンペチタの製品の特徴を模倣したり依拠することなく、デザイナが自らデザインを描けば自ずと生まれる著作権としてのオリジナル性について記すということです。

表現としてのオリジナリティをどう評価するか

 表現としてのオリジナリティ性を評価するポイントは大きく分けて以下の3項です。

  • 表現が独創であり模倣でないこと
  • ユーザーを想定していること
  • 製品の機能・性能・コストなどに良い影響を与えていること

表現が独創であり模倣でないこと

 独創を評価するためには他者と異なることを証明する必要があります。デザイナが自分で考えた形態・色・質感だと主張しても、既存製品として存在していれば独創とはみなされないからです。

 本ログではデザインとは「ユーザーを想像して製品を形作る諸要素全ての最適解」としています。製品を形作る諸要素の全てで、形態・色・質感のすべてが他社の既存製品と同一になっていることは新たにデザインしたとは扱いません。コンペチタの製品より優位な製品を生み出すのがプロジェクトですから、コンペチタと異なるオリジナリティを有することは当然求められますから著作権侵害はあってはなりません。

 著作権侵害はCIやBIの観点から、また製品の出荷停止や著作権料の支払いといったプロジェクトの経済的な計画が狂う点においても、絶対におこしてはいけませんから、しっかりとチェックしましょう。

著作権侵害を認められるために必要な3項

  • 1)著作物性
  • 2)依拠性
  • 3)類似性

 1)著作物性は、模倣される対象に著作物となり得る特徴点があることが必要です。全く特徴のない製品は基からオリジナリティがないとされ問題外になります。

 2)依拠性とは模倣の対象となる製品を拠り所として模倣したかを問題とします。

 3)類似性は著作物性が認められた特徴点に如何に似ているかを評価します。

 模倣されたオリジナル側が著作権侵害の訴訟を起こす際、この3項を証明することを求められる事から、ハードルが高くなり、裁判で勝てる可能性はあまり高くない。と法曹関係者から聞いたことがあります。しかし他者の著作権をギリギリでかわせたとしても、対象となるプロジェクトの注目度が高い場合、ネットでの中傷などプロジェクトのイメージを大きく毀損しますので他者の著作物に近似した製品を上市することは絶対に避けるべきでしょう。

ユーザーを想定したオリジナリティとは

 表現としてのオリジナリティというとアートと混同しやすいので注意が必要です。

 デザイン学科の実習で、アートの要素を入れたいという案が出てくることが多々あります。これを一概に否定するものではありませんがアートの捉え方が間違っていることがほとんどです。

 特にモダン・アートといえば「他人の評価は全く意に介さず、自分だけが良いと思っている我流な表現」と捉えている学生が非常に多いと思います。

 モダン・アートとは何でしょうか?

 20世紀以降の芸術について記した著述として「13歳からのアート思考 末永幸歩著」のなかに分かりやすい表現があります。アート思考とは「自分の好奇心や内発的な関心からスタートし価値創出をすること」です。これをユーザサイドから見ると「独自の視点で新たな価値提案をしてくれる」モノがアート要素となると思います。

 「13歳からのアート思考」はとてもおもしろい本ですので一読をお勧めします。

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 本ログはデザインを「ユーザーを想像して製品を形作る諸要素全ての最適解」と定義しました。デザイナとはデザインを作り出す人としてユーザを想像するのですから、製品に自分だけが良いと思っている要素が、そのままユーザにとっての最適解になるという発想はありえないはずです。

 もちろん自身がアーティストとしてファンを獲得している場合、その一部をキャラクタとしてデザインに入れ込んだりすることで製品として成立しますが、それはデザインとは別の話です。

 ですからデザインの一つの要素としてイラストレーションや加飾を加える場合、あくまでも製品の一要素であり「アートそのものではない」ということを忘れないことです。

 逆説的ですがオリジナル性がないこともまた特徴となりますので、それについてはアイデンティティ評価の項を参考にしてください。(詳しくはこちら

製品の機能・性能・コストなどに良い影響を与えていること

 製品の機能・性能・コストなどに良い影響を与えるとは、デザインを優先させて製品の機能や性能、コストに悪影響を出してはならないということです。

 やもするとオリジナルとなる特徴を出したいために、力学的に無理をしたフォルムをデザインしたり、質感を上げるために経時的劣化に目をつぶり、耐候性の弱い素材を使ったり、見栄えを良くしたいために複雑な構造により極端なコストアップで採算を無視したりする。このようなデザインを取り入れてしまうことが散見されます。

 この件についてはオリジナリティの有無にかかわらず、デザインクオリティ全体の話と共通ですので、詳細は後述の洗練度評価でに詳しく記します。(詳しくはこちら

 次はデザインポリシー評価について考えていきます。

 ではまた!

 

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