デザインポリシー評価

design-quality-evaluation-policy デザインディレクションとは

デザインポリシー評価

 デザインのポリシーが製品を構成しているあらゆる部分で揃っているかを評価します。

デザインポリシーとは

 ポリシーとは方針を表し広辞苑によると「①方位を指し示す磁石の針。磁針。②進んで行く方向。目ざす方向。進むべき路。(―を立てる)(施政―演説)」とあります。

 この評価はCIやBIに広く関わることですが、ここではプロジェクトによってデザインされた製品のあらゆる部分の仕上がりが、すべて同じ方針に従ってデザインできたかに絞って評価する規準を考えます。

 ですから製品全体の佇まいや目立つデザインポイントだけに限られた話ではなく、ディテールとなる部分のデザインにもポリシーを持ってデザインを揃えることが出来ているかを評価します。

 製品のデザインを決める面の構成や面の流れ(つながり)など、製品の作り込みは、部品の構成、部品の作り易さや組み立てし易さとトレードオフになることが多くあります。作り易さが重視され過ぎて、作り手の視点だけでデザインされると製造の都合が製品の表層にあらわれてしまい、デザインクオリティが極端に劣化することがあります。

 また製品の購入体験を行う実店舗やネットなどの環境や、製品を手にしたときのパッケージ、開封し取り扱い説明書などを見たときのクオリティ、またメンテナンスを行う際など、様々な場面でユーザーはUXを評価しています。これらの期待に応えるべきポイントを見極め、評価する判断規準を組み込むことは、CI・BIを考える上で非常に大切です。

製品の見えない部分のデザインポリシーも揃っている。

 これはメンテナンスの時にしか露見しないような製品の裏面や製品の内部(電子回路基板やエンジンルーム)も外観同様のデザインポリシーでデザインされていれば、冒頭のユーザーだけでなく、メンテナンスの担当者に対しても製品に対して高いデザインクオリティを感じてもらうことができ、ブランドを支える関係者のプライドを育み、BIの向上に大きく寄与します。

製造の都合が外観に出ていないことです。  

 プロダクトにおいて主な具体例は、ネジを見せない。組み立て精度を上げる。成形部品の分割線(パーティングライン)を見せない、または最小にする。など製造する上で非常に面倒で手間の掛かかることを総称して、製造の都合と記しています。

 ネジを見せない例では、廉価なノックダウン方式の家具であれば問題視しない場合がありますが、洗練された家具はネジが見えないようにデザインされているものが多くあります。ネジは視覚上のノイズになるだけでありません。部品同士を簡単に接合する方法としてネジは使われますが、構造から経時的に緩むことが想定されます。永続的に安定して使いたい家具では、ネジはパーツ同士が外れる可能性をアフォードしてしまいます。このようなネガティブな認知を与えるアフォーダンスは無い方が好ましいという考えから、ネジは極力使わないようにします。

 しかし製品輸送の都合などでどうしてもネジによる組み立て式にしたい場合があります。その際はネジを外観から見せないようにデザインを行うことで、分解できる・緩むといったネガティブなアフォーダンスを消すことが出来ますから、諦めずに知恵を絞ってデザインしていきましょう。

 このようにネジを見せないためには、構造が複雑になる可能性が高くコストが上がってしまいます。このコストが許容出来ず見える場所にネジを使う場合は、ネジの質感を上げてネジをデザインポイントにする。などの配慮が必要です。

 また組み立て精度の例として、外装パネルを構成しているパーツ通しの合わせ精度があります。これは製造クオリティを表す指標ともなるチェックポイントで、パネル同士の隙間をチリといいます。高い精度で組まれている製品はこのチリの幅が非常に少なく、段差も極小に抑えています。チリが広く段差が大きいと製品のパネル面のつながりが悪く見え一体感を損ないます。対してチリが狭く段差が小さいとパネル面の流れが良くなります。これも小さなことのようですが製品の佇まいを大きく左右するポイントですから、デザイン時にチリが極力少なくなるような面構成をとれるように配慮することが必要です。

 さらに製品の外観に現れないところでも、電気製品では回路基板、クルマではエンジンのカバーのデザインなど、エンジニア任せにせずディレクションすることで製品のデザインポリシーは揃えられ、製品全体のクオリティは上がります。

 またプラスティック製品では、抜きテーパ(成形型から製品が抜けやすくするために設ける斜面)やパーティングライン(金型の合わせ目には発生する細かなバリによる線)をどの様に取り回すか、ゲート(プラスティックの射出口)、イジェクターピン(金型から製品を押し出すピン)などの製造跡をどこに設けるかで、製品の見栄えというクオリティは大きく変わってきますし、パッケージなども、印刷時の面付けを変えることで印刷の発色が変わります。

 このようにデザインディレクタは製造を担当者任せにせず、製造仕様についても勉強しデザインディレクションする際の配慮により、製造コストを抑えながら、デザインポリシーを揃えデザインクオリティを向上させることができますから、デザイン評価の際の判断する規準に組み込んでおきましょう。

 次はデザインの洗練度について記していきます。

 ではまた!

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