事業化後のフィードバック

Feedback of the project デザインディレクションとは

デザインを決めるディレクタとして事業化とその後

 プロジェクトは製品のデザイン開発が終わった時点で終わりになりません。プロジェクトが終了し次工程に引き継がれても、製品を作る人、その売り方を考える人、プロモーションをする人、実際に店頭やWEB・SNSなどでユーザに対して製品をユーザへ伝える人などから、デザインディレクタへ製品の情報を教えて欲しい旨の依頼が入ります。

 そして製品を使ったユーザからSNSなどを介してフィードバックが始まり、ユーザ間やユーザ候補となる人たち、また製品の関係者への伝わっていきます。

 プロジェクトを指揮したデザインディレクタとして、プロジェクトを実行した企業の満足度。企画の意図以上に作り上げられたかという製品の完成度。そしてユーザに受容され社会への影響度。これらのフィードバックを行うことが大切です。これらはプロジェクトの評価であると共に、今後のプロジェクトを更に洗練するために大切な作業です。

 これら3項はプロジェクトの初めに関係性(くわしくはこちら)を整序しました。

 これらの3項はプロジェクトが事業化されたことによって変化したのか、その変化量と変化のベクトルは他に好影響を与えたのか、または悪影響になってしまったのか、それぞれの優先順位に変化はあったか。これらの循環には変化があったのかを考察します。

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Fig.23

 私自身はプロジェクトを同時並行で多数行うことが多かったため、プロジェクトが終わると、新しいプロジェクトや他のプロジェクトに追われ、フィードバックを深く考察することがあまり出来ませんでした。そのため次々とプロジェクトを進める合間に、前のプロジェクトの考察を行なってきましたが、できれば時間を取って関係者とじっくりと議論した方が良かったと反省しています。

デザインディレクタが行うべきフィードバック

 デザインディレクタが事業化後に行うべきフィードバックする内容は以下の3点です。

  • 製品の完成度
  • 企業の満足度
  • 社会への影響度

製品の完成度

 プロジェクトを終えた後から見れば「こうすれば良かった」ということが散見出来ると思います。でもそれは仕方のないことです。製品の完成度は絶対に100点満点にはならないものです。様々な試行を繰り返してきた最終形が製品です。〆切が来て最後の決断をして「ここでデザイン終了」を告げるのがデザインディレクタです。最終のデザインを見て「迷った箇所」以外にも、後から「失敗した・・・」と発見する部分も多々あると思います。これらは自身のディレクションが甘かった事例として次に活かしましょう。

 製品の完成度を高めるデザインディレクタとしての行動指針は、全てのプロジェクトで「誰よりも広く深く考える」「誰よりもたくさんの仮説を出す」「誰よりも素早く実行する」に尽きると思います。これら「仮説を出す、推論する、試行する」これを誰よりも多く、かつ早く実行できたかが結果として製品の満足度につながってくると思います。

 製品の完成度が自身の期待値まで上がらない場合、それが自身のディレクションミスであれば、どこで間違ったのかはしっかりと考察しなければいけません。

 同じく製品の完成度が上がらなかった理由がリソース不足の場合は、自分の考えの至らなさに腹が立ち、フィードバックどころでないかもしれません。リソースが不足していても製品のアイデアを早く具現化したいという誘惑に負けて、リソース不足を承知でプロジェクトを起こすという愚挙に出て失敗したことが一度ならずあります。

 しかしリソース不足を上層部など他者のせいにしても始まりません。本来はディレクタである自分の見込みが甘かったことが原因であり、プロジェクトを始めるタイミングを見誤った事例として考えるべきでしょう。リソースの見極めはとても大切です。

企業の満足度

 プロジェクトが経済的に成功することはとても重要です。成功を続けることでデザインディレクタとして、次々とプロジェクトを実行することが経営層から期待され使えるリソースも増えてきます。

 しかしプロジェクトを全て大成功に導くことは非常に難しいでしょう。私もトータルするとヒット率は3割程度かもしれません。しかし事業を継続するために一定期間を通して損益の合計が黒字であることが大切です。

 結果論になりますが、私自身は全てのプロジェクトで堅実に黒字を狙うというよりも、ホームランを目指してフルスイングし続けれきた。という自負があります。どのようなプロジェクトでも一生懸命に全力で当たっています。その結果凡打になることもありますが、超特大ホームランを数本打ったおかげで、プロジェクトを安定的に任されるようになり、企業サイドの満足度に貢献できたと考えています。

社会への影響度

 デザインディレクタに限りませんがモノづくりを指揮することは、社会の公器としてのリソースを一定期間は専用で使ってしまうことを意味します。その貴重なリソースを使わせてもらい行うのが製品開発ですから、社会に対してポジティブな影響を与える製品を作るべきだと思います。

 社会に対して新たなユーティリティを提供する。価格を抑えて普及率を上げる。というわかりやすい経済合理性のある価値を提供することは大切ですが、プレミアム製品を世に送り出すことも大切です。一部の方はプレミアム製品は無駄と感じると思いますが、製品には経済合理性以外にも大切な役割があります。

 それは製品には文明を発展させ文化を花開かせるという価値を生むからです。

 デザインディレクタは経済合理性はしっかりと担保しつつ文化・文明に影響を与える仕事ができたかを評価されていると肝に命じて精進していくことが大切です。

 ではまた!

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