プロジェクト後のフィードバック

feedback of the @roject デザインディレクションとは

デザインした製品をユーザに届けるまで

 ユーザに製品を届けるまでの段階として、情報を次工程に伝えデザインを事業化する上でデザインを決定するディレクタとして大切な仕事は以下の2点です。

  • アウトプットしたデザイン情報が正しく伝える
  • 情報の熱量を高める

この2点について説明します。

アウトプットしたデザイン情報が正しく伝える

 製品のデザイン開発が終了し販促の準備が始まるなかで発信すべき内容について、デザインの現場から発信したい情報が極力ズレのないよう正しく伝わるように配慮しましょう。

 デザイン情報の中でも特に以下の3点に注意します。

  • ミッションが正しく伝わっているか
  • 製品コンセプトが正しく伝わっているか
  • 表現手段が適切か

 デザイン条件の提示については「デザイン条件のまとめ」カテゴリで説明しましたが個々に確認していきます。

ミッションが正しく伝わっているか

 プロジェクトのミッションとして、プロジェクトでの所与の条件と求められる条件から、相互作用も含め優先順位や重み付けといったことを考慮しながら、バランス良く達成できるポイントを探しました。これがプロジェクトの起点であり、製品コンセプトの起点ですから正確に伝わっているかを念入りにチェックしてください。(ミッションの再設定についてくわしくはこちら)  

 ミッションの実現に向けてプロジェクトでは製品を開発しましたが、そのミッションを実現するためにデザインディレクタとして援護できることがあれば最大限の協力をしていきます。

製品コンセプトが正しく伝わっているか

 製品を見て製品コンセプトが寸分違わずターゲットとなるユーザ全員に伝わるのであれば良いのですが、なかなか正しくは伝わりません。コンセプトメイク・プロセスでも説明したように、製品コンセプトの大きな目的のひとつにデザインスタッフ全員の製品に対する認識のズレを最小にする(くわしくはこちら)ためです。プロジェクトに関わるデザイナ間であっても情報をズレなく伝えることはとても難しいことですから、プロジェクト後のステークホルダーへ製品コンセプトが正しく伝えることは難しいと考えてください。

 ですから製品開発が終了したあとも、製品コンセプトを広告や宣伝・販売促進といった、業務を行う社内外のクリエイタには正しく認識してもらうように、情報が常に正しく伝わっているかを確認し、ズレていれば些細なズレでも正していきましょう。

 製品コンセプトのズレを最小限度に抑えることができれば、概念の総量を適切に更に大きく燃え上がらせつることが出来ますが、ズレが大きいと思わぬ方向に概念が膨らんでしまうことが懸念されます。

表現手段が適切か

 前記のミッションと製品コンセプトを正しく共有できていても、次工程以降のスタッフの表現手段が適切かどうか、完成度は製品と同等以上に仕上がっているかチェックが必要です。

 以前の例として、プロダクトデザインの部隊と、取扱説明書やパッケージを専門とするデザイン部隊に分けている大手生活家電メーカとコラボレーションした時の話です。その企業の既存製品はコモデティ向けの量産品を主とするメーカでした。プロジェクトは既存から脱却してプレミアムポジションの製品を作るもので、そこでデザインディレクションをした時の話です。

 プロダクトデザインでは既存品にないシンプルな面構成ながら塊としてプレミアム感を醸し出すことに成功したと満足していました。その後取扱説明書の確認がしたい旨を依頼したところ、すでに製品の情報が届いていてグラフィックデザインが完成していると聞かされました。そのグラフィックデザインを確認させてもらったところ、既存のコモデティ製品と共通のフォーマットに則って制作され、製品を描いた線画だけが差し替えられたものでした。同時期にパッケージも専門のデザイン部門で既存コモデティ製品と同一フォーマットのパッケージが上がってきました。既存のフォーマットはコモデティ製品向けの仕様です。使用する紙質なども廉価な仕様に固定されていて、とてもプレミアムポジションの製品に相応しいものではありませんでした。このときは愕然とし、事業責任者に掛け合いましたが、取扱説明者やパッケージは購入する時にユーザが見るものでなく、この一つのプロジェクトのために仕様を変更することはリソース上無理ということの一点張りで、結局そのまま押し切られた形となり、とても残念な気持ちになりました。

 この例は極端ですがコモデティからプレミアムまで広いラインナップを持っている企業では往々にあることなので、デザインディレクタとして製品に関わる全ての表現手段が適切か、確認していきましょう。

情報の熱量が低い。

 情報は熱量が低いと伝搬していきません。情報には熱量があります。熱量が高いというのはその情報を発信する人の熱意に掛かっています。できる限り熱量をあげてプロジェクトで作られた製品の特徴をアピールしてください。

 私の知り合いでアパレルブランドをデザインとして主宰している方がいます。この方は自身の作るアパレルを提案する際、「自分がデザインした服が、今現在自分自身が最も好きな服であり、最も着てみるべき服であることを誰よりも熱く語る必要がある」と話してくれました。

 自身で自身のブランドを熱狂的に支持する。たとえコンセプトにちょっと無理のある設定でも、自分が狙った新たなチャレンジを100%肯定的に捉え、デザイナである自分自身がプレゼンテータとして様々なメディアに素晴らしさを伝えることが大切です。成功しているブランドをマネジメントしている方に合うと、皆さん自身が推している製品をビックリするほど熱く語ります。相手が何か話し出す前に「これ良いでしょ」と最初に肯定的に推してきます。例外はありません。

 このように高い熱量で伝えられた情報は直接伝えられた人で留まらず、その人がまた他の人に伝えてくれます。この口伝えの効果は絶大で、発信源の人が想像している以上に伝搬していきます。熱量が高いことで関係者の間で対流を起こし熱量がまた新たな熱量を生み、遠くまで伝搬していくのだと考えられます。先のデザイナの話をこのノートで紹介していること自体、このデザイナの熱量が高かったからこそ、私へ色濃く影響を与えた結果だと思います。

 逆に発信源の熱量が低ければ直接伝えた相手にも特徴点は伝わらず、一次情報で伝わらない情報がその先に口伝えで伝わるわけはありませんから、伝搬力はゼロとなり、逆に相手におもしろくないと言われてしまえば伝搬力はマイナスになってしまいます。

 ですから熱量をあげて伝えることはとても重要です。熱量が低いと利害関係が同じであるはずの同僚ですら巻き込めないということが起きます。

情報は熱量を上げて発信する。

 日本人に特有な性格なのかよく分かりませんが、自分が制作した成果物に対して自身の評価が厳しすぎる傾向があります。プロジェクトで出来た製品を本心から100点満点だと言えるデザインディレクタはいないと思います。その気持は私も同じです。自身がディレクションした製品に反省点が全くないということが有り得ず、もっと良く出来たという思いが必ずあるからです。

 ですが製品がユーザーに届くまでの段階でデザインディレクタのあなたは製品の反省を口にしてはいけません。なぜなら情報の熱量を著しく下げてしまうからです。「嘘でもいい」とは言えませんが、この段階でデザインディレクタであるあなたは「今度の製品は良いでしょう」と製造や販売などの準備をしている人に言うべきです。

 またすべての他者からの批評が100点満点になることも有り得ません。ですがデザイン開発の終了を宣言したのは他でもないデザインディレクタであるあなたです。ですから他者からの批判は真摯に聞くことは大切ですが、ここで言い訳を言ってはいけません。この行為も情報の熱量を著しく下げてしまいます。

 ですからデザインディレクタは製品を作り情報発信を次工程に渡してからも、製品の良さをアピールし続け批評に耐える度胸が必要です。

 もし次工程以降を担当する責任者がいて、その方が販売のプロフェッショナルとして情報発信を引き継いでもらえるのであれば、デザインディレクタであるあなたは情報を次工程に渡したら一旦引き下がり、次にもっと良い製品を作る様、準備に専念した方が賢明かもしれません。その理由は先の反省や言い訳を次工程に漏らさないためです。

 ではまた!

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