トレンドを感じ取るセンスの磨き方

how-to-train-trend-senses デザインディレクションの知識・ノウハウ・スキル

センスとはなに

 センスとは広辞苑によると「(1)物事の微妙な感じを悟る働き・能力。感覚。(2)思慮。分別」とあります。様々なセンスがありますが、デザインに活用するには「近未来のトレンドを嗅ぎ分けるセンス」が欲しいところなので、過去から現在、未来に向けてドレンドがどう変わっていくか、といった大きなトレンドを感じ取る働きを、ここではセンスと定義して考えていきます。「今シーズンのアパレルは黄色がトレンド」というような局所的な情報ではなく「様々な製品がミニマルからデコラティブ方向に動き出した」というような大きなトレンドが「どちらの方向に、どのくらい傾いているか」のように抽象度を高めて把握することが大切で、その磨き方を考えていきます。

センスは先天的 or 後天的

 以前、ある講演会でファッションデザイナの山本耀司さんが「ファッションセンスのうち、形と色は後天的に鍛えられる。しかしボリュームは先天的だ」とおっしゃっていました。そのとき「確かにボリューム感は難しい」と思いました。携帯小物のプロモーションのためスチールやビデオを撮影をよく行いますが、モデルさんの表情、着ている服、髪型、靴など、形態やカラーや質感はもちろん大切なので吟味します。寄りの画角ではディテールが見えてきますから、画角の範囲でのアパレルと携帯製品の見え方は当然大切になります。しかし引きの画角では、携帯小物という製品は大きさが小さいですからあまり良く見えなくなります。その際のアパレルや携帯小物のボリューム感は遠目からのバランスに大きな影響を与えます。このボリューム感は時代感と直結しています。形態やカラーや質感はボリューム感の上に乗って表現する手段です。ですからファッションの土台となるボリュームがトレンド感を反映していないと全てが台無しです。今まで様々なスタイリストさんと仕事をしましたが、ボリューム感を見事にアジャスできるスタイリストさんは信頼できると思います。

 それはとにかく、このお話を伺った頃、クリエイターとしてセンスは鍛えられるの?といろいろ考えていましたので、形と色は後天的に勉強できるという山本耀司さんの話はとても心強く思いました。ボリューム感に限らず、天才的なセンスの持ち主がいることも確かで、先天的としか言えないひらめきの凄さがあることも確かですから、自身が天才的と自信のある方以外はいっしょに考えていきましょう。

 では後天的に鍛えられるセンス、それもトレンドを感じるセンスに焦点を当てて考えてみましょう。

トレンドを感じるセンスの磨き方

 一ついえることはトレンドというと、どうしてもモノの供給者サイドが作るものと感じますから、企画者のあなたがトレンドを考えるときメディアで流布しているさまざまな情報を探したくなります。例えばプルミエール・ヴィジョンなど有名です。世界中のさまざまなメーカがこの情報を元ネタとして協調して新製品を多数上市してくる事実から、情報としてとても有益です。しかしここでは個人のセンスを磨くことを考えていますから、このような業界情報を人一倍早く集めれば良いという話ではありません。

 センスは一朝一夕に身につきません。様々なモノゴトを大量に、しかも何シーズンも長い時間をかけて見続けることで、時間軸の変化とともにトレンドが変化していくことに気が付きます。まるでAIがディープラーニングするイメージです。これらの時間軸を伴って変化していく様々な事象を、自身の中でなぜこの様に変化してきたのか?という仮説を立て、その仮説が正しいかったかや、同一トレンドが継続しているのか、などを次のシーズン、その次のシーズンと検証する必要があります。

 ですからトレンドを感じるセンスを磨くためには、興味があるなしに関わらず、雑多にある様々なモノをとにかくたくさん見て、「最近モノのエッジが立ってきたな」とか「素材量が増えてボリュームが上がってきたな」「無彩色から色相が入ってきたな」など帰納的推論が行えるように多くを見て感じましょう。良く10代のころは「トレンドなんて関係ないよ。私がトレンドそのものだから」とみんな思っていたと思いますが、それこそ身の回り全体がトレンドの中にドップリと浸かった生活をしていたから、そのように感じたのだと思います。ですから環境全体がトレンドに漬かれていることが一番ですが、そんな環境で生活していたとしても意識してトレンドを感じるように生活することが大切です。 

トレンドを感じるとは

 まずは自分が興味のあることから、トレンドの変化を一つの事象を捕まえてみましょう。そこから他の事象がその仮設にハマるかを考えてみます。ファッションを例に考えてみます。そこで自身が最も気になるトレンドの変化を感じたら、その変化がファッションというカテゴリの中で波及しているか見てみます。または他のファッションカテゴリから波及してきたものか観察します。ここで言っているトレンドの変化とは、自身で気づいたトレンドの仮説になります。

 次にその仮説のハマる範囲をファッション以外にも広げてみましょう、インテリア、さらにプロダクトなどにも起きているか見てみましょう。仮説がどのくらい広く影響を与えているかを観察します。まだ影響していないとしたら、影響を受けたらそのカテゴリーはどのように変化することが可能かなど、今後の仮説も考えてみましょう。このように仮説の確からしさを自分なりに検証していく姿勢を持ち続ける。これがトレンドを感じるということに繋がりまから、適宜考察することが大切です。

自分がデザインを決めるディレクションできる領域について

 ここでは自身で取り扱える範囲のトレンドについて考えることにします。自身で取り扱える範囲とは共感出来る範囲です。逆に言えば、自身で全く興味がなく、嫌悪するようなトレンドに関していくら考えたとしても、それを今後のクリエイションにつなげていくことはできないでしょう。ですから嫌悪感を持つ領域でクリエイションを行うことは無理と諦めるべきでしょう。

 以上のような視点を持つことは、様々なプロジェクトでデザイナや企画者と議論できるようにセンスを磨くために、トレンドをつかむ1つの方法として効果があると思います。

 今回は「トレンドを感じ取るセンスの磨き方」について考えてみました。

 ではまた!

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