デザインを起こす際にデザイナへインプットする情報とは
ビジネスパーソン(企画者&経営者)が欲しいデザインとは「企画の意図である製品コンセプトがユーザの目にハッキリと伝わるデザイン(形・色・質感)」だと思います。これは言うは易くですが簡単ではありません。
この企画意図をまとめた製品コンセプトはビジネスパーソンである企画者が責任を持って作り上げるものです。その製品コンセプトを意図したとおりにデザイナに伝える必要があります。そしてデザイナには、伝えられた製品コンセプトの概念を内包しつつ「先進的ではあるがギリギリ受け入れられる」MAYA理論の範囲でクリエイトしてもらうのが理想形です。
MAYA理論とは
19世紀後半、フランス人でアメリカで活躍したデザイナのレイモンド・ローウィーの提唱した「Most Advanced Yet Acceptable.:先進的ではあるがぎりぎり受け入れられる」の頭文字を取ったMAYA理論を提唱しました。これはデザインを生業とする者が今も守っている大事な考え方です。
企画意図を明確にしたいという一念から、一般的なデファクトとなっている形態からあまりにも特殊な形態へ特化したデザインにすると、製品の機能が分からなくなることがあります。例としてアナログからデジタルへ情報機器が移行していた1990年代、様々なカテゴリで機器の電気処理がアナログからデジタルへ変わる際に、デザインを制限していた様々な電子素子が変化することで、様々なデザインパッケージの試行錯誤が起こりました。そのため汎ゆるカテゴリーでデファクトスタンダードを決める覇権争いが勃発しました。その代表例がカメラです。フィルムを必要としなくなったことでパッケージの自由度が拡大したことにより、様々な新しい形態の製品が発売されました。中にはどうやって使うのかわからない形態の製品も発売され賛否両論を生み、使い勝手はどうなのかワクワクしながらそれら新しいデザインのデジタルカメラを購入した時代でした。当時びっくりするような面白かった機構は淘汰され、品質やコストから現在のデファクトが定まりました。そしてスマートホンの登場により携帯用の小型のデジタルカメラ市場は取って変わられることになりました。
デザイナへの情報インプット
デザイナへの情報インプットは「格好よく雰囲気のいい”言葉とビジュアル”」でお願いするのが当たり前と思っていたことも企画者になりたての頃はありました。
デザイナに格好良いものをイメージしてもらうためには、この「格好良く雰囲気が良い」ということが大事であることも確かですが、ビジネスパーソンでデザインディレクタのあなたは、企画の成功率を高めるために製品が「格好良いこと」はもとより、プロジェクトにおける企画の正当性を説明すること、ユーザーから評価される製品とは何かを製品コンセプトとしてデザイナへ伝えることが大切です。
まずは製品コンセプトの伝え方について考えてみます。
製品コンセプトに必要な情報
製品コンセプトには本来は以下に示すような、さまざまな情報を包含している必要があります。足りない情報は前述のデザイン条件のまとめやコンセプトメイク・プロセスを参考に情報を集めましょう。
- A)CIやBIから生まれたデザインテンション(テンションについてくわしくはこちら)B)製品のポジショニング
- C)ユーザーに強く認知して欲しい突出させた概念とその優先順位
製品コンセプトを説明するときの注意点
製品コンセプトはできるだけ端的な言葉で表現するために抽象的な言葉だったり、ニュアンスを多く含む言葉で書かれることが多いです。この製品コンセプトをデザイナへ開示して説明する際に、先述の3項目を詳しく説明しましょう。そしてニュアンスが分かりづらいところは写真やイラスト、カラーチップなどのグラフィカルな資料を用いて補足説明をしましょう。
このとき説明の力点はA)からC)を均等におくことが大切です。
やもするとC)を強く推しすぎてしまうことが多くあります。A)と B)は企画者であるビジネスパーソンのあなたは既知のことであってもデザイナが充分に理解していないことがあります。外部デザイナであれば尚更です。デザイナはC)ユーザーに強く認知して欲しい概念を実現するために、A)デザインテンションを変えたり、B)製品ポジショニングを変えて表現するということを試してみたくなるものです。このように企画の意図から外れることはザイナは新たな提案を良かれと思い行うことですが解領域を逸脱することで、プロジェクトの解にはなりません。
このようにC)を推すことに夢中になり、A)の説明がおざなりにすることが、結果として企業のCIやBIのイメージチェンジを製品コンセプトが求めているかのような勘違いをデザイナにさせることがあります。またB)の説明をおざなりしした場合も製品のポジショニングの変化を求めているような勘違いをデザイナにさせることがあります。くれぐれも説明の力点は均等に行うように心がけ間違った方向へ検討が進まないよう注意が必要です。
次項では CIやBIから生まれたデザインテンションの指示の仕方について考えます。
ではまた!
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