本項の内容
デザインを決めるディレクションの仕事の一つにデザイン作業の指示があります。
本項はプロジェクト初期におけるアイデアスケッチの制作手順と、デザインディレクタが注意するポイントを記します。このアイデアスケッチの制作とあとの章で記すデザインの評価を何度か繰り返すことでデザインを固めていきます。デザインの評価については別項で詳しく記します。
デザイナへのデザイン依頼について
デザインして欲しい条件をデザインディレクタが経験豊富なデザイナへ提示することで、自分の慣れた方法でアイデアを提案してくれると思います。そのアイデアの出し方はインハウスデザインでもデザインファーム系でも、その社内での方法に準じて行われます。
ここではこのデザインが作り上げるために、いままでデザイン開発プロセスとして記して項をまとめながら、デザイナへのデザイン依頼するかについて記していきます。
アイデア出し段階でのアイデアスケッチとは
デザインの手順は製品の種類やプロジェクトの性格によって異なります。さらにデザインプロセスのどの段階にあるかで異なりますが、アイデアスケッチの制作は以下の手順で行うように依頼します。
デザイナへデザイン条件がインプットされる
- デザインテンションを指定します。
- 製品のポジショニングを説明します。
- 製品コンセプトを説明します。優先順位をしっかり説明します。
- 仮設定したデザインゴールを説明します。(設定していない場合は除く)
1)アイデア出し
- 個々のデザイン条件からあらゆる方向に発想を飛ばしてアイデアを出し尽くしてもらいましょう。
- 出てきたアイデアはデザイナ自身で評価せず、全て記録して残してもらいます。求められたソリューションという解領域の条件を乗り越えてしまったアイデアや、製品のデザインクオリティが劇的に変わるアイデアも残してもらいます。
- 製品を考えたときにモチーフとして適切と思われるアイデア、例えば形、色、カテゴリや固有名称なども忘れないように記録してもらいます。
- • 担当してもらうデザイナを集めてブレーンストーミングや各種の強制発想法を実施してアイデアを出し尽くすようにします。
2)発想を視覚化する
- 発想がモノになるか具体的にラフスケッチを描いてもらいます。
- ここでは考え得るアイデアスケッチを描いてもらいたいので、全体像でなく部分でも良いので描いてもらいます。
- 製品だけでなく使っている使用しているユーザーも想定して体の一部も描いてもらいます。
- ラピッドモックアップの制作を依頼する。新しい試みを含むアイデアの場合は極々簡単なモックアップを作ってもらう。実寸で作れない製品でプロダクトの場合は人が触るところ(UIに関わるところ)があればそこだけでも作ってもらう。
3)アイデアを粗選りする
- 洗い出したアイデアスケッチを製品コンセプトの優先順位順毎にまとめて並べてみます。
- 個々のアイデアを同時に解決できるアイデアがあるか検討します。
- トレードオフの関係になってしまうアイデアがあれば、解決策を考えます。
- 製品コンセプトの優先順位の高い順に、複数の条件を同時に満たすアイデアを選びます。
この時最も大切な条件から順に合致していくアイデアほど好ましく、できるだけ多くの条件に合致する方が好ましいことが多いです。
アイデアをデザイナ自身で粗選りしてデザイン提案としてまとめて提案してくれると思いますが、デザイナの考えたアイデアスケッチの中でもっと面白いアイデアがある可能性もあるので、スケッチは全て見せてくれるように依頼します。
デザイナからアイデアスケッチの説明を受ける際の注意点
アイデアスケッチを見たときに着目する点は3つあります。
1)アイデアの質に注意
- ソリューションのコアとなるアイデアの質が高いかが最も評価するポイントになります。
- アイデアスケッチの表現力に惑わされてはいけません。スケッチが稚拙なために面白いアイデアを見逃す可能性がありますからスケッチの巧拙に惑わされないように十分に注意が必要です。
- プロポーション・バランス・リズムが全体またはディテールの表現が面白いアイデアは評価して残します。
- デザイナの説明が言語表現上稚拙であっても、内容としては面白いことを言っている可能性もありますから、アイデアをすくいあげる感覚でキーワードに注意して聞きましょう。
- またプロジェクトには直接使えなくても非常に面白いアイデアがあれば、デザインディレクタとして高い評価を与え、以降のプロジェクトでも提案してくれる様、デザイナに依頼します。
2)アイデアの発展性
- アイデアの方向性を活かし発展させられないかというポイントに着目します。
- 複数デザイナが考えたアイデアを合体させるなど、組み合わせて更に面白く発展できないかに注目します。
3)次元を変えるアイデアはないか
- 条件の次元を超えるアイデアについて、デザインディレクタ自身がプロジェクト全体を統括している立場であればプロジェクト自体の変更を含め採否を決定できますが、もし担当を分けている場合はアイデアを伝え、プロジェクト全体の見直しが必要かを決めましょう。
以上のようにアイデアスケッチの段階ではとにかくアイデアを漏らさずに検討遡上に乗せることが大事です。
まとめ
デザイン手順はこのアイデアスケッチ段階に限らず、書き出す粒度によって異なったことが記されているようになりますが、手順は1)アイデアを出し、2)視覚化し、3)取捨選択する、という段階で決められることには変わりません。
言い方を代えると、デザインのアイデア出しとは、デザイン条件という仮説にもとづいて出した演繹的な推論によりアイデアを出し、これらで得られた多くのアイデアから帰納的な推論によりアイデアを収束させていく事の繰り返しです。その中で求めている解領域(くわしくはこちら)を乗り越えるギリギリのところまで、発散と収束の繰り返しを行うことが求められます。言い方を代えると解領域を乗り越える案が出るまで考えないと、アイデアを出し切ったかどうか分からないとも言えます。
本項はアイデア出しに於けるアイデアスケッチの依頼について、デザインディレクタが注意するポイントを記しました。
プロジェクトにおけるデザインの評価方法については別項で記します。
ではまた!
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