デザイナとビジネスパーソン(経営者)の違い
ビジネスパーソン(ここでは企画者と記します)はデザイナを正しく理解しているでしょうか? デザイナをまとめて言えば「ユーザーを想定してモノゴトの完成予想図を作る人」です。
もうすこし詳しく言うと、デザイナは企画案をユーザが使うことを想像し、ソリューションを創造します。この架空のソリューションを可視化するスキルを持つ者がデザイナです。
それと似た仕事にアーティストがあります。アーティスとデザイナの違いは何でしょう。デザインを「ユーザーを想定してモノゴトの完成予想図を作る」とすれば、アートは「自身の視点でモノゴトを作る」となります。アーティストはユーザーを想定しません。ですからアートは作った人の”作品”となりますが、デザインは作品ではなくユーザーを想定した”製品”になります。またデザインが完成予想図を作るのに対してアーティストはモノゴトを完成させます。
では企画者との違いはなんでしょう?企画者はユーザーを想像してソリューションを考え、ビジネスとして成立するような考えを企画する人となります。ここでデザイナと違うのはビジネスとして成立させる。というところです。ですからフィジビリティ・スタディ(実現可能性検証)を行い、社内や関係先のステークホルダーや、エンジニア・デザイナといったプロジェクトのクリエイタ達が発見した、企画を実行するために必要な課題を解きながら、企画全体を推進することが主な仕事になります。
ビジネスにおいて、クリエイションの起点は企画者となることが多いと思います。ビジネス成否の責任はその企画者が負うことになります。ですから企画したソリューションを可視化して完成予想図に仕上げることでステークホルダーを説得したい。しかし可視化するスキルがない企画者は完成予想図を作るという大切な作業をデザイナに頼らざるを得ません。
ですからデザイナが可視化したソリューションの完成予想図に対し製品コンセプトとして、より推し出したい概念を適切に表現してもらいたいという思いから、伝えたい意見も多くなり、デザイナに変更や修正の依頼をしたいと考えるのは当然です。
デザイナを正しくリスペクトする
企画者が強い知識とスキル
企画者は生い立ちが文系、理系などさまざまで、専門知識も一部分では持っていると思いますが、企画の推進について専門的な教育を受けていない方がほとんどでしょう。おそらく保有する知識やスキルは以下が強いのではないかと思います。
- 社会・経済・工学・業界などの一般的知識とそれらのトレンド
- 企画をまとめるマーケティングツールについての知識とスキル
- ネゴシエーション・スキル
デザイナが強い知識とスキル
対してデザイナはほとんどの人がデザインの教育を受けているでしょうから、強みと言えばデザインに関する専門的な知識を有することと、なんと言っても「イメージを具現化できるスキル」がある事です。
- 得意な業界のデザイン・コンテクストとトレンド知識
- デザインを作る思考と手順
- イメージを具現化するスケッチやグラフィックアプリのオペレーションスキル
デザイナのセンス
デザイナと企画者は強みが違います。ここで注目して欲しいところは、デザイナが強い知識の項にセンスが入っていないことです。デザイナは概念を形に変換する経験を積んできていますが、そのセンスが必ずしも企画者よりも優れているということは担保されていないということです。ですからデザイナの提案を「センスが良いはず」と、無条件に受け入れる必要はありません。
一緒に働くデザイナですから、そのセンスを少しでも否定することにためらいを感じる方もいると思います。これはデザイナに限りませんが、センスを100%共有できる人を探すことは、どんな間柄の人たちでも無理だと思います。ですから自分のセンスに自信を持ってデザイナと虚心坦懐に話し合いましょう。
デザイナは様々な事例をたくさん知っていますし、幅広いセンスを許容する訓練も受けていますから、実現したいデザインについて、いろいろな情報を会話の中から拾い上げてくれます。デザイナに対して「デザインに関する知識をたくさん保有してスキルを磨くことにかけた時間」への無条件のリスペクトを怠らなければ、企画者の意見を柔軟に受け止めて、良い関係を築くことができるはずです。
次はデザイナの選定について考えます。
ではまた!
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