「ーバウハウス・システムによるーデザイン教育入門」を他のログで紹介しました。(くわしくはこちら)この本はデザイン教育の入門書として記された本です。
この本にはデザインにはシュパンヌンク(テンション)というデザインの根幹をなす概念と併せて、デザインの要素とデザインの原理についての説明があります。
デザインの要素とデザインの原理とは
デザインとは五感を「計画的かつ恣意的に刺激することを計画し準備する」ことを呼び、刺激される対象として「要素 Element」 と刺激する方法を類型化し「原理 Principle」があるとしています。
デザインの要素とは
要素は人間の五感のどこが刺激されたによって異なりますが、視覚表現を計画的に配置するデザインにおいては「線・形・色彩・テクスチャ・空間」の五つが主たる要素となり、これに「調子・塊」を加え七つの場合もあるとします。
デザインの要素である線や形は数学や製図で扱う場合と異なり、線の太さや角度、表現する材料によって感じが変わり、これらの色彩を含めて芸術的に扱うのがデザインとしています。
デザインの原理とは
デザインの要素はそれ自体では、まとまりのない、生命のないものです。これらを統一し、生命のあるデザインされたモノとするために、要素を選択し配置され、結合を決定することがデザインであり、デザイナの方法を類型化するとデザインの原理として、バランスBalance・プロポーションProportion・リズムRythm・エンファシスEmphasis・ハーモニHarmonyの五つになります。
1.バランス
バランスは重力による物理現象から生じています。赤ちゃんのときから老人になり生涯にわたり生活のなかで随意筋と不随意筋を動かし人は物理的なバランスを得ようとしています。このバランス感覚がデザインの原理として作用します。
視覚におけるバランスはシンメトリのバランスと不規則な中でのバランスに分かれます。
2.プロポーション
日本語では比例とも比率ともいわれ、モノの一部分が全体に対して相互に気持ちよく感じられる関係を指します。テーブルの天板の縦横比や天板と高さの関係などで、単に美感だけでなく、実用性や機能性からの要求も併せ持ちます。プロポーションとしては黄金比(1:1.61)が有名です。
3.リズム
リズムは本来は、音楽やダンスの基本原理で、運動や時間に関係して流動的なものです。自然界には生物の動作、呼吸、脈拍、歩行、疾走、叫び、鳴き方にリズムがあります。
視覚的には時間と運動は無関係ですが、線や形を見て活動的なリズムを感じることができます。リズムの最も簡単なものは同じ形を繰り返すことです。これを発展させデザイン要素の選択、配置、結合によってリズムを表現することができます。
4.エンファシス(強調)
強調とは形、色彩、テクスチャを特に目立たせて目を引くようにすることです。主題を大きくする。太くする。背景とのコントラストを高くするなどしてハッキリと目立たせることです。
5.ハーモニー
ハーモニーとはリズムと同じ音楽的術語で、異なった楽器の音や歌声がひとつにまとまり、美しい音として聞こえることで、これが音楽になります。
バランス・プロポーション・リズム・エンファシス(四項)はハーモニーによってひとつにまとめられます。言い方を変えれば前述の四項はハーモニーを成り立たせるため個々の要素ということになります。
デザイン原理の相互作用
これらの原理は前述の要素すべてに当てはまり、かつ相互作用があります。つまりデザインには、形のバランス・プロポーション・リズム・エンファシス・ハーモニーがあり、色彩のバランス・プロポーション・リズム・エンファシス・ハーモニーがあります。さらに線・テクスチャ・空間にも同様の五つ原理があり、これらのが描け合わさることなどで相互作用が生まれます。
デザイン原理の使い方
このデザイン教育入門にはデザインの原理について面白い記述があります。
以下引用です。「このデザインの原理は伝統的なアカデミックな美学にもデザインの原則として一般的に知られているが、教育上の抽象的な言葉で教えるべきでない。なぜなら原理は人間の行為を後から理論にした抽象的なものあり、原理からデザインは生まれない。つまり原理からデザインを学習できないため、学ぶ側には不用・・・略」としています。しかしデザイン教育を行う教師の立場では知っておくべきと記しています。
デザインを議論するときはデザイン要素と原理を使ってみよう
このデザインの要素と原理はまさしくデザイナーでないビジネスパーソンがデザインを考える際に非常に便利なことばであり考え方です。デザインを依頼するとき、デザインについて議論するとき、出来上がったデザインにコメントするとき、このデザインのデザインの要素・デザインの原理に併せてデザインテンション(くわしくはこちら)を使うと、説明が非常にしやすくなりますので、是非使ってみてください。
ではまた!
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