ミッションとは
ここでのポイントはプロジェクトの準備プロセスにおいて最も重要な「プロジェクトのミッション」まで立ち返り、場合によっては再設定が必要なことについて説明します。
ここで言うミッションとは営利企業では当然として追求している「企業の売上や利益を上げる」という事業の糧をより稼ぐという目標から、「ブランドの価値と認知度を上げる」といった企業として長い目で見た目標。また事業を維持発展させるために有望な人を集めたい「リクルートでの人気を高める」など、事業を営む上で求められる、あらゆる目標が入ってきます。そしてプロジェクトではこれら複数の目標をバランス良く達成することが求められます。
プロジェクトを行う目的、つまりミッションを考える際に、プロジェクトを構成する様々な視点から概念を集めていきます。(アイデアを集めていくことと同様です)そして集まった概念を上位の概念に抽象化していくわけです。
前項のフィジビリティスタディであらゆる条件から止揚された概念が、目標をバランス良く達成できるプロジェクトを設定する。「バランス良く」が最も重要なところで、利益率が高くてもユーザに悪いイメージを与えたのでは事業の永続性を毀損します。ユーザに良いイメージを持ってもらいながらプロジェクトの目標を達成できるというバランスの良い企画が必要です。
ミッションの条件
これらの高次元のミッションは企業の営業活動を総括するコーポレイト・アイデンティティ(以下C・I )やブランド・アイデンティティ(以下B・I )の必要条件を包含することが条件となります。
プロジェクトではこれらの目標を如何にミッションまで止揚させることができるか、前述の「プロジェクトのリソースとフィジビリティスタディ」までで考えてきた、自社のスタンスと企業戦略レベルのミッションの中で、プロジェクトで達成する目標を見極めることが、ミッションの再設定に含まれる条件です。
例えば「事業の糧をより稼ぐ」と漠然と利益を求めているというところで検討を止めず、今回のプロジェクトは「市場での受容性を調査するテストマーケティング企画」であるとか、「工場稼働率を維持する」「技術力を誇示する」といったものだったり「ブランドポジションの変更のための認知度アップ」など様々なミッションがあり、優先順位1番のミッション「事業の糧を稼ぐ」の裏に「リクルートを有利に」「市場のシェア獲得」など優先順位2番のミッションがあり、以降3番、4番と続けて考えていきます。
ミッションのまとめ方
プロジェクトにおけるミッションを構成する目標の重み付けと優先順位はどのように決めたら良いでしょうか。
ここで「デザイン・ディレクションに必要な情報整理」(くわしくはこちら)で考えておいた自社のスタンスが活きてきます。現時点でのスタンスが明確になっていれば、自らが進みたい方向へ行くための目標と、その優先順位の比較で、どのくらいのリソースを投入していくかというバランスの良い比率を考えることで、ミッションとしてまとめていけるからです。
ここではプロジェクトのミッションは概念的なものになりますから、自ずと文章で表されます。企業戦略とスローガンのところで紹介した各企業のスローガンよりは具体性が必要で、できるだけプロジェクトの進むべき目標を的確に指し示すキーワードであることが望まれます。
ミッションの再設定の重要性
事業ドメインが明確にされ、企業内で企画からデザイン、制作、実行部隊と事業の機能が揃っている企業ほど「ミッション」の確認をせずにプロジェクトが進んでしまうことがあります。というのも明確なドメインで、中期計画などもしっかりと決められ、そのなかで起動する新企画ですから、プロジェクトのミッションは事業の継続のためと思い込んでいる場合がほとんどだからです。さらに様々な職能の社員が揃っている企業は、外部へ業務依頼することが少ないので、ミッションを再確認し合う必要性が発生しません。しかし本来はこの確認はとても大切です。
どの様なプロジェクトであっても、始まる前にミッションの再設定と、それらの優先順位について議論を重ねることが必要です。ですから「デザインディレクションのプロセス」に、忘れずに「ミッションを再設定する」を組み込んでおきましょう。
ではまた!
コメント