判断規準からデザイン検証への展開
デザイン評価の判断規準を「アイデンティティ評価」「ユーザビリティ評価」「クオリティ評価」の3つに大きく分けました。
前項までに、上記のデザイン評価の判断規準を洗い出しました。判断規準がはっきりすれば評価行為の準備は整ったといえます。あとは実際のデザインが評価の判断規準というものさしによって、求められる判断基準内に収まっているのかを確認していく作業になります。ここでは判断規準を如何にして実際のデザイン評価につなげるかを考えます。
プロジェクトでは製品のカテゴリーやコンセプトによって評価する規準は大きく異なりますが、ここでは実際のデザインをどのようにして評価規準と照らし合わせていくかという考え方を記します。具体例はまた別途記す予定です。
デザイン手法
製品がプロダクトの場合にデザインを伝えるためのテンプレートとして下図のデザインの3要素「 Form・Color・Material:以下FCM 」と、デザインの5原理「Proportion・Balance・Reythm・Emphasis・Harmony:以下PBREH」を掛け合わせる方法を本ログでは紹介しました。(くわしくはこちら)
Fig.16
デザイン評価を行うにあたり、ステークホルダ間でコンセンサスを得たデザイン計画が出来ていれば、計画とデザインの摺合せがデザイン評価になります。このデザイン計画は実際のデザインを行う初期の段階で様々な補正を入れていくことになります。そしてデザイン開発の最終盤では補正を含めてデザイン計画が最適だったかをデザイナから上がってきた最終のレンダリングやモックアップなどを見て評価することが、製品としてのデザイン評価です。デザイン計画については「デザインゴールの仮決定」を参照してください。(くわしくはこちら)
デザイン計画の段階では完璧に思えたデザイン要素と原理の割り付けも、デザインディレクタの考えと異なった方向に進んでいることが、可視化されはじめて気が付くといった事があります。これはデザイナの勘違いによることもありますが、デザイナとのコミュニケーション不足であることが大半です。
またデザイン計画策定時には見つけられなかった最適な解をデザイナが見つけることもあります。このようにデザイン計画を超えるアイデアが提案された場合は、素直にそのアイデアを支持しデザイン計画の補正を行う必要があります。このデザイン計画の修正はデザインディレクタが行うべき内容です。
さらにプロジェクトで決めてきた解領域(くわしくはこちら)よりも高位の概念によるアイデアが生まれた場合、総合的に考えて企画段階へ差し戻すべきと判断した場合は、プロジェクトにとって大きな計画変更に」なりますが、真摯に受け止めて検討する必要があります。プロセスのフィードバックに関しては「ミッションへのフィードバックと製品開発決定」を参照してください。(くわしくはこちら)
デザインディレクタとしては、自分が決めたデザイン計画に固執して、デザイナが提案してくれた良いアイデアを潰すといったことだけはないよう注意しましょう。
デザイン検証の項目数
検証する組み合わせは項目数で見ると、デザイン要素の評価が3項目、デザイン原理の評価が5項目、これらの掛け合わせは15項目を、これらに加えユーザビリティ評価規準3項目、デザインクオリティ評価規準3項目ですから、その総和は135項目、相互作用を考えると最低で90,000通り以上になります。
さらにアイデンティティ、ユーザビリティ、デザインクオリティの評価判断規準はプロジェクトに則して個々に枝分かれしていきます。さらにその判断する基準となるしきい値は、プロジェクトに応じて存在しますので組合わせ数は膨大です。
これら各評価のうち、ユーザビリティ評価はチェックリストを使い確認していくことが非常に有効な評価判断規準です。
チェックリストでの検証としてユーザビリティ評価を検討する際におすすめの本はユーザ工学入門:黒須正明著(くわしくはこちら)
これに対してアイデンティティ評価とデザインクオリティ評価は、チェックリストでも評価規準となるデザイン上の配慮の有無は判断できますが、達成レベルの判断はチェックリストではできません。
この達成レベルの判断はCI・BIの中で製品ポジショニングと製品開発を行ってきた組織に根付いており、組織毎、企業毎に独自の風土が育まれています。この概念をここではブランド品質と呼びます。このブランド品質はとても大切な概念です。コモデティティ製品を多く手掛けてきた企業のブランド品質と、プレミアム商品だけを手掛けた企業が求めるブランド品質は大きく異なります。さらに同じプレミアムの商品を作っていてもカテゴリーや国・地域によっても異なります。このブランド品質を把握してコントロールすることはとても大切なので別途詳述しますが、本項では企業によって異なるブランド品質の差を考慮せず、一般的な判定規準の考えかたについて記していきます。
デザイン計画とデザイン評価
デザイン評価とは「的確なデザイン要素に対して的確なデザイン原理を使っているか」を判断することとします。
デザイン(Design)=デザイン要素(Element=FCM)✕デザイン原理(Law)ですから、デザイン原理毎にデザインを因数分解して考えていきます。
デザイン=(FCM)✕ Proportion +(FCM)✕ Balance +(FCM)✕ Reythm +(FCM)✕ Emphasis+(FCM)✕ Harmony
となり、デザイン要素であるフォルム・カラー・質感をデザイン原理毎に評価して総和として加算したものが評価となります。
これらの評価行為を各々で行い、それらを統合し判断することがデザイン評価になります。
以上がデザイン評価への展開イメージです。
次項ではデザイン達成レベルの評価について記していきます。
ではまた!
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