製品コンセプトとは
製品開発には欠かせない「製品コンセプト」。企画を考える際は当然のように作る製品コンセプトですが、なぜ作るのか理由を考えてみます。
製品コンセプトとはどのようなモノでしょうか。一言でいえば「製品の目標となる特徴を表した言葉」です。
コンセプトとは広辞苑によると「(1)概念。(2)企画・広告などで、全体を貫く統一的な視点や考え方」とあります。リーダース英和辞典では「概念、観念、考え、構想、コンセプト」とあります。要は「製品を概念化して共通理解できる概要を言い表す」ということです。
概念化とは該当する具体的な製品の本質を伝えるために抽象化して短い言葉に整序して表現することです。
概念化する理由は該当する製品から内部に含み持つ意味(内包・シニフィエ)を取り上げるためです。製品が何を発信しているかを概念として言葉で伝えた方が、着目して欲しい内容やその意味を明確に指し示すことができるからです。
このコンセプトは作り手視点では製品をこれから作る際の目標となります。またユーザ視点では製品を見て認知した特徴であり、ユーザが欲するモノとして購入の検討に値するかを判断する材料となります。
ユーザ視点で製品コンセプトを作る理由
仮に製品の概念をまとめずにバラバラにしたままユーザに知覚してもらうことがあったとしたら、どんなことが起きるでしょうか。たくさんの概念を知覚した人は、それらを個々に認知していきます。それと併せて関係がありそうに感じた部分同士を感じ取ります。そして脳は認知の処理を減らそうとして、近くにある部分同士、似たような部分同士をまとめたり、時間軸やロケーションといった関係性のある概念同士を集めてまとめたりします。
これは人が刺激を知覚した場合、たくさんの情報を今までの経験をもとに理解しやすい簡単なものにまとめて認知します。これは脳の処理を減らそうとする本能によるもので心理学ではプレグナンツの法則と言い、ゲシュタルト心理学の中心となる概念です。
この概念同士をまとめる行為のなかで相互作用により、もとから有った概念以外の新たな概念を自らが生み出していきます。この概念の総量が増える例としてスイスのブレゲというウオッチを見てみます。「Made in Swiss」だから 「品質が高い」といったロケーション情報が生み出す推論をユーザ自らが生み出し、その上に「1775年創業からブレゲのデザインは大きく変化していない」という情報から「デザインが陳腐化しないだろう」という推論が掛け合わさり、さらに「この時計はロバート・デ・ニーロがしていた」という情報が重なることで、概念は掛け合わされ大きく膨らんで「この時計が自分にふさわしい」となり「非常に高価な製品でも、その価値がある」というユーザ認知が完成されます。
このように製品コンセプトはその構成する概念要素と組み合わせ方という見せ方によって、高いレバレッジ(テコの作用)を生むため、「どの様に製品を売り込むか」という戦術の全てを効果的に盛り込むために、敢えて抽象度を上げて作ります。
作り手視点で製品コンセプトの使い方
次に作り手視点での製品コンセプトの使い方を見てみましょう。
「作り手として関わるスタッフ全員のイメージを揃える」ことが最初の目的で、これはスタッフ全員の製品に対する認識のズレを最小にするためです。
プロジェクトにおいてスタッフは製品により様々ですが、与えられた条件と求められる条件を集め、考え得るアイデアを出し、その中から最適な解を出すという仕事を行う人たちであることに変わりはありません。
これらのスタッフ毎に持っている全ての経験やスキルを活かして、求められる製品の条件に対して最適化された部分という概念に、より大きなレバレッジを掛けてくれることを期待されています。
また製品開発が終了したあとも広告や宣伝、販売促進といった社内外のクリエイタが活躍するところに製品コンセプトを投入することで、イメージのブレを最小限に抑えつつ、更に概念の総和が大きく燃え上がり、巨大化したイメージに育て、その大きくレバレッジの掛かった概念を伝えることが期待されます。
製品コンセプトを作る理由まとめ
以上のように製品コンセプトを作る理由は、大量の概念をユーザ視点と作り手視点の双方でうまく簡単に伝わり易くまとめるためであり、また大きくなった概念をさらに大きくするようレバレッジを掛ける概念の巨大化を期待しているからです。
この作用をうまく使うことで、価値観が全く異なる文化圏でも成立する製品コンセプトであれば、ワールドワイドでコンセプトは受容され世界的なブランド製品に成長する可能性が高まります。
ゲシュタルト心理学についてはくわしくはこちら。
ではまた!’2024.1更新しました)
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